2008 Fiscal Year Annual Research Report
幕末明治初期の日本文学と「民衆」思考に関する総合比較研究
Project/Area Number |
18320040
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
キャンベル ロバート The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 教授 (50210844)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 悟 実践女子大学, 文学部, 教授 (50178729)
鈴木 俊幸 中央大学, 文学部, 教授 (00216417)
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Keywords | 幕末 / 明治維新 / 日本近世文学 / 日本近代文学 / 啓蒙と文学 / 出版史 |
Research Abstract |
1.出版と庶民教化近世期蚊から近代にかけて、日本のいわば出版インフラが社会全般に重大な役割を果たしたことは言うまでもないことだが、本研究では、幕末から明治初期において、出版行為が庶民教化にどう関わるかを、具体的に検証した。いおゆる民間教訓書から儒家の言論、維新期以降は初期新聞の雑報・論説・投書・広告欄、太政官の出版にかかわる通達と公文書などから、出版と出版流通(新聞雑誌をふくむ)をめぐる言説を収集解析した。 2.寓意言説の展開慶応年間(1865〜1868)に幕府が抱える洋学者の間に英語版『イソップ物語」が輪読され、その日本語訳も、彼らが発行し流布させた『中外新聞』(整版、慶応4年2月〜6月発行)にさた。またその一員であった渡部温が、独自の和訳『通伊蘇普物語俗』を明治6年に東京で発刊したが、これらのことが契機となって、以後10年間ほど日本各地の新聞雑誌または単行本として、『イソッ』を模倣したいわば日本版「イソップ」寓話が大流行する。早い例として福沢諭吉の女性向け教訓書『かたわ娘』(明治5年刊)を指摘することができるが、教訓を企てた単行本にかぎらず、儒者の文集から、各地の小新聞に掲載された投書にいたるまで、当時の文学風土をすっぽり覆うほどの現象にまで発展した。近世期小説にみる従来の「寓意」言説との相違を測りつつ、近代期の世相と生活意識に対する当時の思考言論を収集し、解析した。 3.都市風俗誌〔明治版繁正志記モノ〕の系譜天保年度に刊行された『江戸繁畠記て寺『軒著、5編5冊)は、明治時代を通して後印のかたちで読み継がれていたが、一方幕末期以来、これをモデルとして『何炉繁昌記』という各地の風俗世相を記した地誌小説が産み出されていた。文久元年『横浜繁昌記』(柳河春三著、1冊)に始まり、明治10年代までに30種類以上の『繁昌記』が漢文または日本語で書かれ、刊行された。各地に残る類似の写本とあわせて豊穣な文献群だが、基礎的な書誌調査をふくめ、舌付かずの領域となっている。繁昌」概念およびその描出には、概して風刺がこめられており、その読解を通じて幕府の瓦解から自由民台頭までの当世批判を俯瞰し、表現と思考の意味づけを考察することは可能である。幕末から明治初期の「繁昌記モノ」を1反集し、解析した。
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Research Products
(1 results)