2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18320042
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
前田 雅之 Meisei University, 日本文化学部, 教授 (00209389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 剛生 人間文化研究機構国文学研究資料館, 文学資源研究系, 助教授 (30295117)
錦 仁 新潟大学, 人文社会教育科学系, 教授 (00125733)
千本 英史 奈良女子大学, 人間文化研究科, 教授 (50188489)
渡部 泰明 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (60191813)
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Keywords | 古典 / 書物の移動 / 下賜 / 献上・進上 / 書写依頼 / 貸与 / 天皇・公家・武家 / 三条西実隆 |
Research Abstract |
研究の成果について、ご報告する。平成21年3月に「室町期における下賜・献上・進上本の基礎的研究」(研究成果報告書)を完成した。これについて、明星大学で二度に亙る研究会・打ち合わせ、静岡大学で研究会をもった。この報告書の眼目は、第二部「室町期における書物の移動データベース抄(15世紀分)」である。当初、本科研では、下賜・献上・進上本のみを考えていたが、それでは、室町期における古典形成、古典の伝播、古典の継承を捉えることが不可能であると判断し、とりあえず、前代に成立したと思われる書物(漢籍は原則的に外したものの)がなにかしらの理由で移動したケースを調査することに変更した。しかし、この場合、膨大な数量に達して、本科研の力量を越えてしまう。よって、やむなく、15世紀だけに限定し、これまで調査した書物の奥書類・記録その他から、移動の実態を明らかにすることに努めた。結果的には約1800例の移動のデータをとることができた。とはいえ、その半数以上は、『実隆公記』であり、まだまだ遺漏も多く、はなはだ心許ない限りだが、このデータを見るだけでも、いかに書物、とりわけ古典的書物と思われるものが頻繁に移動を繰り返している実態が納得されると思われる。ここから、何を読み取るかは今後の課題ともいえるが、天皇の集書活動、公家の集書活動、将軍の集書活動に並んで、地方の武将・その卑官と都にすむ貴族との間の起こる書物の移動等を見れば、だいたい室町期において、古典が前代に比較して、広範に流布していった様が了解できる。問題は、14世紀後半、および、16〜17世紀初頭における書物の移動のデータベースが欠落していることである。これらのデータがそろうことによって、室町期の書物の移動データベースは完成し、古典形成・古典流布といった中世における古典の様相の実態が解明されるだろう。これは今後の課題としたい。
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