2009 Fiscal Year Annual Research Report
イギリス初期近代における宗教と演劇文化の歴史的研究
Project/Area Number |
18320048
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
清水 徹郎 Ochanomizu University, 大学院・人間文化創成科学研究科, 准教授 (60235653)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村井 和彦 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 教授 (40174255)
佐藤 達郎 日本女子大学, 文学部, 准教授 (10283194)
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Keywords | 演劇 / 宗教改革 / 英国初期近代 / 詩 / エリザベス朝 |
Research Abstract |
平成21年度は、5月、7月、9月、11月、1月の計5回、研究会会合を開催し、研究代表者、同分担者、連携研究者、研究協力者による研究成果の報告と討論を行った。そこで報告された主なテーマは、「栄光」の概念の推移、ロマンス文学翻訳をめぐる政治的・宗教的コンテクスト、劇場空間における詩的手法の応用、シェイクスピア悲劇の改作の変遷における治的・宗教的コンテクスト、大学出身劇作家の評伝研究における方法的問題、大陸のプロテスタント系印刷業者による古典文学出版の宗教的・政治的・商業的コンテクストなどである。本研究はエリザベス政権後半における政治的・宗教的抗争というコンテクストを踏まえた上で、その状況の中からいかに新しいドラマツルギーとポエテックスが成長を遂げたかを追跡した。 研究代表者は研究組織全体の成果を取りまとめる作業を行うとともに、以下の研究成果を得た。1580年代を中心に活躍した詩人・劇作家の材源研究を調査したが、とくにChristopher Marloweの場合、牧歌詩・エピリオン・悲劇に共通の古典文学の典拠が、主としてスイスのプロテスタント系人文主義印刷業者によって刊行された、小型普及版の古典文庫であった可能性が高いことがわかってきた。古典文学の印刷本は、二つ折り(folio)から十六折り(sedecimo)まで多様なエディションが流通していたが、一般読者への普及という観点から言えば、十六折り・八折りといった小型本の存在が重要であった。とくに十六版は印刷紙も粗悪なものを使ったので、廉価であったと想像され、読者もかなり気軽に入手できるような環境にいたことになる。本研究で注目したのが、そのような印刷業者がCalvin主義を奉じる都市に集中しているところである。本研究終了後も、聖書、殉教者列伝、プロテスタント主義の神学書が大量に印刷された脇で、偶然の副産物のような形で刊行された異教趣味の純粋文学的テキストがイギリ期近代文学の形成に果たした役割をとその意味を見極めていく作業が残っている。
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Research Products
(7 results)