2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18320053
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤田 緑 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (10219024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 研一 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (80170744)
笠原 賢介 法政大学, 文学部, 教授 (10152620)
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Keywords | アフリカ / アビシニア表象 / オリエント表象 / 啓蒙主義 / 旅行記 / 日欧比較 / 異文化衝突 / オスマントルコ |
Research Abstract |
本研究の基軸となるサミュエル・ジョンソンの『ラセラス』は、アビシニアの王子ラセラスとその妹がエジプトを遍歴しつつ幸福の意味を探求する観念的な物語である。だが、王女の侍女がアラブ人に誘拐されたり、トルコ兵が登場したりと、当時流行していた文芸モチーフも巧みに取り入れられている。従って、藤田は本年度、ジョンソンの非ヨーロッパ受容を研究の中心に据え、『ラセラス』以外にも、ジョンソン唯一の戯曲でありながら、現代に至るまで等閑視されてきた『アイリーニ』を取り上げ、同戯曲の典拠ともなったノールズ著『トルコ史』(1603)等を読み解きながら、18世紀英国におけるアフリカ・オリエント像に考察を加えた。また英国図書館等にて奴隷貿易・奴隷制廃止関係資料およびアフリカ・アラブを題材にした戯曲・小説の文献調査に従事した。 佐藤の本年度の課題は、18世紀ドイツ文芸における非ヨーロッパの受容を見定めることである。そこで、当文芸が、北アフリカを領有するオスマントルコとの遭遇の衝撃をいかに伝えるか、検証を加えた。具体的には、ヘルダーが複数座標軸に則って、従来の歪曲された非ヨーロッパ像を批判した点を検討し、『後宮からの奪還』(1782)等の「トルコものオペラ」を考察した。その結果、当文芸には、「野蛮」なオリエント像のみならず、異文化の衝突から生まれる創造的変化も読み取れる点が知られた。さらに、オーストリア国立図書館では18世紀オリエント・アフリカ関係文献を調査し、軍事史博物館やウィーン市立歴史博物館では絵画資料を蒐集した。 笠原は、アフリカ表象とも密接に関連する啓蒙期ヨーロッパのイスラーム像を解明する作業を行ない、その成果を日本ヘルダー学会のシンポジウム「ヘルダーと異文化世界(2)」において、「レッシングとイスラーム」として発表した。また、『アビシニア啓蒙物語』分析の前段階として、18世紀後半のドイツ思想史のなかでのクニッゲの位置を考察した論文、「クニッゲと啓蒙の社交性」を執筆した(07年10月公刊予定)。
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Research Products
(1 results)