2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18320053
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤田 緑 Tohoku University, 大学院・国際文化研究科, 教授 (10219024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 研一 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 教授 (80170744)
笠原 賢介 法政大学, 文学部, 教授 (10152620)
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Keywords | アフリカ / アビシニア表象 / オリエント表象 / 啓蒙 / 旅行記 / オスマントルコ / サミュエル・ジョンソン / ヘルダー |
Research Abstract |
藤田は、S.ジョンソンの非ヨーロッパ受容を基軸に、周辺の作品のトルコ・ペルシャ・北アフリカ表象に照準を合わせ、それらの影響関係をめぐり考察を加えた。具体的には、ヴォルテールの『ザイール』、『カンディード』、A.ヒルの『ザーラ』、コングリーヴの『喪に服する花嫁』、W.ドッド「アフリカの王子」を取り上げ、その結果、少なくとも18世紀英国において文芸上ではトルコ人、ペルシャ人、ムーア人はほぼ同一視されているばかりか、彼らのイメージはアフリカ黒人のそれとも錯綜しているとの感触を得た。ドッド等の資料は、英国図書館での文献調査(8月)に基づく。佐藤は、まず18世紀ドイツ文芸が、いかに非ヨーロッパ、特に北アフリカを領有するトルコを受容したのか見極めようとした。具体的には、ヘルダーの『人類歴史哲学考』(1784-91)を貫くヨーロッパ中心主義批判を踏まえて、『民謡集』(1778/79)のトルコ像に検討を加えた。その結果、「野蛮なトルコ」とは、オリエント・アフリカに対する暴虐なヨーロッパ自身の謂である点が明らかとなった。ついで、オーストリア国立図書館に於ける18世紀トルコ・アフリカ関係文献の調査(8月)に基づき、J. M. R.レンツによるプラウトゥスの翻案劇『トルコの女奴隷』(1774)と『アルジェの人々』(1775作)に焦点を絞り、後者の北アフリカ像の特徴を、前者のトルコ像と比較検討し考察した。笠原は、18世紀ヨーロッパのイスラーム像を解明する作業を引き続き行なった。とりわけ、レッシングやヘルダーにおけるイスラームの問題に焦点を絞って考察を加えた。また、共著『ノイズとダイアローグの共同体』においては、クニッゲと啓蒙の社交性をめぐって論究した。これらの作業は、啓蒙と非ヨーロッパ世界像が交錯する作品であるクニッゲ『アビシニア啓蒙物語』の分析の前提をなすものである。
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Research Products
(5 results)