2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18320053
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤田 緑 Tohoku University, 大学院・国際文化研究科, 教授 (10219024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 研一 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 教授 (80170744)
笠原 賢介 法政大学, 文学部, 教授 (10152620)
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Keywords | アフリカ / 黒人表象 / 啓蒙 / プラウトゥス / 西インド諸島 / クニッゲ / レンツ / エクィアーノ |
Research Abstract |
藤田は、英国図書館にて、黒人の登場する戯曲や黒人自身の手記を中心に、虚構と現実世界における黒人像の分析を行った。その結果、米国独立戦争後の黒人人口の流入や奴隷解放運動の興隆により、18世紀後半の黒人イメージは、アフリカではなく西インド諸島の黒人像にとってかわられ、一般的には「高貴」な野蛮人から滑稽な西インド訛りの英語を話す奴隷/下僕として定着したことが明らかとなった。他方、日本では、世界図や万国人物図においてギネア、マダガスカル、「黒人国」の人々がアフリカを代表する人物として描かれた。彼らは「黒坊」あるいは「黒ん坊」と称されて川柳に詠われ、戯作にも登場した。国を閉ざし、三国世界観が支配的な日本でも、黒人が無縁の存在では決してなかったのである。佐藤は、考察の焦点を非ヨーロッパからアフリカに絞り込み、J. M. R. レンツのプラウトゥス翻案劇『アルジェの人々』に表れるアフリカ像を分析し、独善的ヨーロッパ文明の自己批判の契機を読み解いた。また、オーストリア国立図書館所蔵の18世紀ドイツ戯曲の「アフリカもの」や「黒人奴隷もの」を考察した。「トルコものオペラ」のアフリカ黒人が「後宮の番人」役として野蛮ないし滑稽な人物像を表すのに反して、ここでは、舞台がヨーロッパであれ、西インド諸島であれ、「市民劇」の主人公として登場することが判明した。だが、概ねアフリカ黒人には、ヨーロッパ文明批判の道具としてドイツ教養市民自身が投影されており、現実のアフリカを冷徹に描くには、フランス革命を待たねばならない。笠原は、クニッゲの『ベンヤミン・ノルトマンのアビシニア啓蒙物語』から伝統的な定型的アフリカ表象と、18世紀に獲得されつつあった新たなアフリカ認識との交錯を見て取った。このアフリカ像こそクニッゲが提示する啓蒙の理念の内実と緊密に結び合っていたのである。
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Research Products
(4 results)