2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18320126
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松木 武彦 Okayama University, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (50238995)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新納 泉 岡山大学, 大学院・社会文化科学研究科, 教授 (20172611)
|
Keywords | 古墳時代中期 / 古代吉備 / 竪穴式石室 / 5世紀 / 日韓交流 / 副葬品 / 勝負砂古墳 / 帆立貝形古墳 |
Research Abstract |
本年度前半の4〜12月においては、2008年3月までに調査を完了した岡山県倉敷市勝負砂古墳の調査記録と出土遺物の整理作業を行い、その成果の一部を刊行するための準備を整えた。具体的には第一に、有機質が付着した遺物について、付着有機物の観察と分析を行い、従来の研究では明らかになっていなかった古墳時代の繊維・皮革製品の実態を明らかにできた。とくに、石室内にイネ科植物の束が置かれていたことの発見によって、古墳の儀礼で農作物の供献が行われていた可能性を明らかにできる予備データが得られた。第二に、副葬品のうち馬具・甲冑・鉄製武器・鉄製農工具類の編年上の位置づけをさらに詳しく検討した結果、勝負砂古墳の築造年代をほぼ5世紀後葉から末に特定することができ、周辺諸古墳との間での築造順序の確定、および吉備地域の巨大古墳形成過程における年代的位置づけを詳細に明らかにすることができた。第三に、1〜2月には竪穴式石室の天井石の3D計測調査を行い、これまでに計測した竪穴式石室各部・各層および副葬品の3D計測値と合わせることによって、埋葬施設ならびに葬送儀礼の時間的推移を立体的に表現・分析するための基礎データを完備した。第四に、勝負砂古墳の墳丘盛土の採取サンプルの分析から各層盛土の採取場所と築成の工法を復元する基礎データを整え、また石室使用石材の岩石学的鑑定を進めることで、勝負砂古墳の地理的・土木工学的側面を解明するための基礎データを蓄積した。勝負砂古墳という貴重なサンプルを以上のような多面的な方向から分析を進めることで、吉備地域における5世紀の古墳の実像とその歴史的背景を復元するため貴重な資料が得られた。 勝負砂古墳の分析を中心とした以上の作業と併行して、吉備地域における古墳時代集落の基礎データの収集と整理に着手した。勝負砂古墳の分析を核とした吉備地域の5世紀前後の古墳の築造過程と集落の展開過程とを照合することによって、本年度の後半には、各古墳の築造基盤を分析することによって、巨大古墳形成過程の歴史的プロセスを、集落と古墳の両面から多角的に復元するための基礎データが、約50パーセント整備できた。
|