Research Abstract |
研究期間初年度である2006年度は研究体制の確立,タイ,ラオスおよびドイツにおける統計資料,地図資料収集と予備的な実態調査をおこなった。 研究体制に関して,タイにおいては,コンケン大学人文社会学部のスタッフと共同研究計画を議論し,チュラロンコン大学人口学部ではタイにおける当該テーマの研究動向についてのアドバイスを受けることができた。また,在バンコクの国連機関であるアジア太平洋経済社会委員会(ESCAP),国際移住機関(IOM)にて国際人口移動,国際結婚に関する聞き取り調査をおこない,今後の協力の約束を得た。 資料収集については,タイおよびラオスにおいて人口センサスの個票データを部分的に入手し,使用許可を得た。また,研究対象となるタイ,ラオスの農村地域のデジタル地図を購入した。実態調査については,タイでは,東北部農村において,海外への出稼ぎ,国際結婚に関する村長への聞き取り調査をある程度の広域で実施するとともに,近年の消費動向の変化に関連して,小売業・卸売業の変化についての予備的調査をおこなった。出稼ぎやとくに国際結婚の多い農村地域は,傾斜地の多く稲作に適さず,キャッサバやゴム,サトウキビなどの換金作物に依存する地域と関連しているのではないか,という予備的な仮説を得た。ラオスでは,中部のサバナケート近郊の農村において,タイへの出稼ぎと農業,土地所有,出生力の関わりに注目したアンケート調査をおこなった。現在,なお分析中であるが,多くの若者が短期的にバンコク周辺に移動して,働いていることが明らかになった。ドイツでは国際結婚によってドイツに移動したタイ人女性へのアンケート調査をベルリンとケルンを中心に実施した。この結果もなお分析中であるが,多くのタイ人女性が当初は仕送りをしたり,きょうだいなどの親族を積極的にドイツに呼び寄せたりしたが,ドイツでの生活期間が長くなるにつれ,また出身地の親族(とくに両親)の死去にともない,仕送りが減少し,出身地との関わりも弱くなっていく傾向があることを示唆する結果を得た。また,高齢化した後,最終的にドイツに定住するのか,タイに戻るのかに関しては配偶者との間に考えの違いがあるという印象を得た。 2007年度はタイ,ラオス,ドイツでの実態調査を継続するとともに,国際学会において,タイ人研究者との共同での成果報告を予定している。
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