Research Abstract |
今年度は,3ヶ年計画の第二年度目に当り,主たる課題は外国調査であった。ドイツ調査は,2007年8月31日〜9月8日の日程で,福井厚,斉藤司がベルリンに赴き,最近のドイツにおける立法及び実務の動向をフォローすることに努めた(福井厚「未決勾留執行とドイツ連邦憲法裁判所判例」法政法科大学院紀要3巻1号〔2007年〕所収は,ドイツ調査の準備としてドイツにおける連邦憲法裁判所の関連判例を整理したものである)。まずフンボルト大学法学部において,ドイツにおける未決勾留改革の新しい立法動向(ドイツでは基本法の改正により地方分権が進展し,行刑も大幅に各ラントに移譲された)に焦点を当て,関連文献を収集すると共に,その理論的な意義の把握に努めた。そして,被勾留者に対する社会的援助のあり方の実態を調査するために,ベルリンのMoabit拘置所を訪問し,その担当責任者から,同拘置所における被勾留者に対する社会的援助のあり方につき詳細な説明を受けると共に,関連資料の提供を受けた。その調査結果は,2007年11月2-3日に龍谷大学において開催された刑事立法研究会において報告した(なお,その調査結果は,季刊刑事弁護において公刊される予定である)。 イギリス調査は,2007年9月2日〜9月10日の日程で,葛野尋之,豊崎七絵,石田倫識がロンドンに赴き,同地における警察留置場,リバプール刑務所,ワンズワース刑務所等を訪問し,わが国における代用監獄問題を批判的に検討する際の視座を得ると共に(その成果は,葛野尋之『刑事手続と刑事拘禁』〔現代人文社,2007年〕に反映されている),わが国における保釈法制のあり方などにつき示唆を得た(石田倫識「保釈法制の改革課題」自由と正義59巻2号〔2008年〕所収,参照)。 フランス調査は,2008年3月8日〜3月14日の日程で,白取祐司がパリに赴き,パリの未決拘禁の実情並びに最近の制度改正及び運用上の問題点等につきH.Stephan判事から説明を受けたほか,リール地区刑事施設で条件付で未決拘禁から釈放するシステムを視察し,Sequedin拘置所を視察し,未決拘禁施設の居房等を視察した。 なお,アメリカについては昨年度(2006年8月16-23日),緑大輔が,アメリカ合衆国の未決拘禁事情の予備調査を行い,今年度に本格調査を予定していたが,予算の問題などもあり(航空運賃が当初予算よりかなり高かったため,ドイツ2名,イギリス3名,フランス1名の運賃で予算を上回った),次年度の課題とせざるを得なかった。 前年度から持ち越されたArbeitskreis Strafprozessreform,Die Untersuchungshaft(1983)の翻訳が完成し,福井厚(監訳)「(西)ドイツ刑事訴訟改正作業班『未決勾留-法律草案及び理由書』」法学志林105巻4号(2008年)として公刊された。 最後に関連業績として木谷明編著『刑事事実認定の基本問題』(成文堂,2008年)と水谷規男『疑問解消刑事訴訟法』(日本評論社,2008年)を挙げておく。
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