2006 Fiscal Year Annual Research Report
裁判官倫理の司法的機能の研究とその法曹教育への適用
Project/Area Number |
18330020
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森際 康友 名古屋大学, 大学院法学研究科, 教授 (40107488)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 恒雄 一橋大学, 法学研究科, 教授 (20127715)
長谷部 恭男 東京大学, 法学政治学研究科, 教授 (80126143)
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Keywords | 実務法曹基礎 / 法曹倫理 / 司法制度 / 社会正義 / 法解釈 / 裁判官倫理 / 司法の独立 / 不偏不党性 |
Research Abstract |
この研究の2つのねらいにむけて、下記の成果を上げた。第1に、法科大学院における授業科目「法曹倫理」の内容を支える理論的な基盤を、法曹倫理の司法的機能の考察を通して整備することであるが、これは二つの方法で進めた。一つは、9月に研究者全員がフランスの研究協力者と行った仏国裁判官倫理の現地調査である。今ひとつは、研究代表者が主宰する法曹倫理研究会で裁判官キャリアをもつ4名のメンバーから聴き取りつつ進めたわが国の裁判官倫理の具体的問題に即した分析である。こうして裁判官倫理の司法的機能の考察を進めた。研究仮説は概ね事実によって裏打ちされつつあるが、新たな収穫は、フランスにおける公法私法の司法レベルでの峻別の実態把握であった。民刑事法の世界では、他の先進諸国と比肩しうる司法の独立が保たれているが、行政訴訟の世界では国家評議会が終審裁判所となっており司法の独立は制度・機関のレベルで否定されている。では、裁判の公正、それに基づく国民の信頼は公法の世界でどのように確保されるのか。複数の高等評議会メンバーとの面接を通して得た仮設は、裁判官として活動する際の、不当な政治的圧力や配慮が入り込む隙を与えない高度の職業倫理および自律性を持った法解釈方法がこれに機能的に代替している、との見方である。 第2のねらい、すなわちこの研究の成果を法理論の分野にフィードバックし、新たな法学の方法と学説をもたらすことについては、裏面の18年度研究成果にその一端を示したが、作業仮設との関係で確認できたことは、日仏のような立憲民主制国において司法がその機能を果たすためには、司法の制度的独立が不可欠ではなく、高度の裁判官倫理や法解釈方法がそれに代替して信頼される法解釈を生み出すシステムが可能性がある、という点である。 成果を19年度のシンポジウムで発表し、また既刊の教科書の改訂内容にフィードバックすべく作業を進めている。
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