2007 Fiscal Year Annual Research Report
裁判官倫理の司法的機能の研究とその法曹教育への適用
Project/Area Number |
18330020
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森際 康友 Nagoya University, 大学院・法学研究科, 教授 (40107488)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 恒雄 一橋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (20127715)
長谷部 恭男 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (80126143)
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Keywords | 裁判官倫理 / ベスト・プラクティス / よき法解釈 / 司法の独立 / 不偏不党 / CSR / 公私の峻別 / 第3世代の裁判官倫理 |
Research Abstract |
この研究のねらいは、2つあった。第1に、法科大学院における授業科目「法曹倫理」の内容を支える理論的な基盤を法曹倫理の司法的機能の考察を通して確立し、未来の法曹が充実した倫理教育を受けられるようにすること。第2にこの研究の成果を法理論の分野にフィードバックし、新たな法学の方法と学説をもたらすこと、である。前者について、『判例タイムズ』1251号で研究成果を発表、また、2007年12月1日に国際シンポジウムを開催し、多くの裁判官や法科大学院法曹倫理教育担当者に対して成果発表できた。その後も、ここで発表した「ベストプラクティスとしての裁判官倫理」というコンセプトについて、裁判官や法曹倫理教育担当者から絶えず反響を得ている。 後者については、上記記事およびシンポジウムで、日仏の裁判官倫理比較調査研究の成果を発表したが、そこでの基本メッセージは次のとおりであった。現代の立憲民主制国においては司法がその機能を果たすためには、司法の独立のもとでの法解釈が不可避である。フランスのように、制度が司法府の独立を予定していない状況で現実には独立しているとき、裁判官の法解釈を恣意から守り、司法府への信頼を保持・向上させているものは何か?この文脈で、裁判官倫理を捉え、それにはどのような機能が期待され、それを実現するためのエートス、制度的政治的条件が何であるかを説得的に提示できたように思う。ここに、わが国を含む立憲民主制における裁判官倫理の本質が見て取れると考える。すなわち、よき法解釈は、裁判官の採用するメソッドだけでなく、司法の独立や裁判官のエートスが誤った理由による法的推論を排除するフィルターの働きをしていることにも支えられている、ということである。そのような総合的視座がこれからの法解釈本質論に必要であり、法理論の革新をもたらすのである。
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