2008 Fiscal Year Annual Research Report
エスニック紛争のグローバル化:南アジア系移民の役割
Project/Area Number |
18330031
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
広瀬 崇子 Senshu University, 法学部, 教授 (20119431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 融 島根大学, 法文学部, 准教授 (50403465)
小槻 文洋 神戸夙川学院大学, 観光文化学部, 准教授 (70454783)
北川 将之 神戸女学院大学, 文学部, 講師 (00365694)
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Keywords | 南アジア / ディアスポラ / エスニック紛争 / 移民政策 / マイノリティ |
Research Abstract |
最終年度は、これまで収集した資料の整理と不足資料の収集を行った上で研究のまとめに入った。これまでの研究成果は、南アジア学会でパネルを組織し報告を行った他、執筆準備を整えた。 本研究は、最終的に3つのコミュニティの政治活動の分析に焦点を絞った。またホスト国の移民政策がそれぞれのコニュニティに及ぼす影響を考察した。資料補足のため、広瀬がカナダで現地調査を行い、またディアスポラの出身地におけるコミュニティ動向の調査として、広瀬がインドのパンジャーブ州でのシク教徒へのインタビューや意見交換を、また伊藤がパキスタン側のカシミールでの現地調査を行った。なお、タミル人に関しては、紛争が現在進行形であること、政治の主流での代表が不在であることなどから、現地調査が当初予定していたようには運ばなかった。5回の研究会を通じて、各自が収集した資料や知見を共有し、討論を通じて一定の枠組みおよび認識を共有することができた。 これらの研究を通じて明らかになった点は以下の通りである。 1ホスト国におけるそれぞれのコミュニティ内部は、非常に複雑かつ分裂しており、ベネディクト・アンダーソンの「遠隔地ナショナリズム」概念でくくれるほど単純ではない。 2コミュニティの分裂にはいくつかの軸がある。第1は貧富の差、ホスト国での成功度の違いなどによる両極化で、特にカナダのシク教徒にその傾向が強い。 3カシミールは、パキスタンにおける政治的地位と同時にインド側のカシミールの扱いをめぐって利害が対立し、それが組織の分裂につながっている。 4移民前の社会的地位、カーストなどの状況が、ホームランドの紛争への関与の度合いの変数となる場合が多い。 5イギリス政府の放任主義は移民コミュニティのゲットー化現象を生み、中でもムスリムの社会的地位の低さはテロのリクルートのターゲットとなる可能性がある。
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Research Products
(7 results)