2006 Fiscal Year Annual Research Report
帰納的ゲーム理論と限定合理性:経験からの社会観形成と行動決定
Project/Area Number |
18330034
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金子 守 筑波大学, 大学院システム情報工学研究科, 教授 (40114061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 英三 筑波大学, 大学院システム情報工学研究科, 助教授 (40317300)
石川 竜一郎 筑波大学, 大学院システム情報工学研究科, 講師 (80345454)
鈴木 信行 静岡大学, 理学部, 教授 (60216421)
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Keywords | 帰納的ゲーム理論 / 帰納的推論 / 経験の蓄積 / 長期記憶 / 短期記憶 / 社会観 / ナッシュ均衡 |
Research Abstract |
本年はこの研究プロジェクトの1年目であり、帰納的ゲーム理論と限定合理性に関しての基礎的研究を行った。18年8月にこの課題に関してのコンファレンスを行った。参加者数は国内から約20名、国外から約10名であり、帰納的ゲーム理論に関しての詳細な議論を行った。これに基づき、研究代表者は国外研究協力者のJeffrey J. Kline氏との共同論文: Small and Partial Views derived from Limited Experiences を完成した。この論文では、特に、限定的な認識能力のもとで、経験からいかに個人の社会観を形成するかを考察した。このような限定性を導入すると、社会状況の構造の全体などは経験からは学習できないことが証明される。 本プロジェクトの重要な点は、上記の各ステップを「限定合理的」プレイヤーの立場から分析することである。上記ステップには「限定合理性」の多くの異なる側面が現れる。例えば、多くを(部分的にでも)経験しなければ社会構造を理解することができないが、そのためには時間がかかり、非定常的経験は忘れてしまうか、意識的に記憶する必要がある。また「限定合理的」プレイヤーは、あまりに複雑な社会観は導出できない。このように、多くの場面で「限定合理性」が関係してくる。これらのステップを「限定合理性」を考慮しながら総合的に研究するのが、このプロジェクトの特徴である。 経験を定常的経験と試行錯誤による新しい経験に分類し、これらの発生過程を定式化する。このようにして生じた経験から蓄積される長期記憶の過程を定式化する。これらを認知心理学的な記憶分類(生の経験-短期記憶-長期記憶)を使って、数学的に記述・研究する。そして、行動決定は既存のゲーム理論(ナッシュ均衡)との関連で研究する。来年度はこのあたりに集中して研究する計画である。
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