2006 Fiscal Year Annual Research Report
研究開発促進と技術普及を両立させる特許制度の設計についての基礎的研究
Project/Area Number |
18330043
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
後藤 晃 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (20054380)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢崎 敬人 工学院大学, グローバルエンジニアリング学部, 講師 (10345150)
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Keywords | 経済政策 / 技術革新 / 知的財産制度 / 特許制度 / 競争状況 |
Research Abstract |
本研究は、各国の特許制度において、技術の開示と独占権の付与のバランスがどのように取られているかを詳細に比較するとともに、このバランスが、研究開発の促進と技術の普及にどのような影響を与えるかを理論的・実証的に検討することを通じ、研究開発促進と技術の普及を両立させるような制度・政策のあり方を探求することを目的としている。 本年度はまず、各国の特許制度等の内容について、各国の法令・判例や事例研究を含む書籍・資料を収集し、分析した。特に、技術開発者がどの程度の情報を提供するとどのような権利が与えられるか、技術開発者が提供した情報はどの程度、またどのように公開されるか、新たな特許出願または特許登録により、既に同様の技術を使用していた者の権利はどの程度制限されるか、といった事項について、現状と経緯の把握に努めた。New Yorkのコロンビア大学が主催した各国の特許制度と技術発展の関係についてのワークショップに出席し、知見を得たのもその一つである。 また理論的分析として本年度は、まずは複占モデルを用い、研究開発、成功企業による技術情報の提供・公開、後続企業による研究開発の続行または成功企業の技術の利用に関する意思決定を捉えるモデルを構築し、強い先発明権がある(先発明者は、後続発明者が同等の技術を特許化しても、自らの技術を使い続けることができる)レジームと先発明権がない(後続発明者が同等の技術を特許化した場合、先発明者は自らの技術を使い続けることができない)レジーム(後続発明者が同等の技術を特許化した場合、先発明者は自らの技術を使い続けることができない)を比較分析した。 関連して、職務発明に対する報償制度のあり方についての理論的な検討を行い、日本の裁判所が用いてきた、使用者、従業者それぞれの取り分を発明からの利益とそれぞれの貢献度の積とするルールは双方による過剰投資、過剰努力をもたらすことを示した。
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