2006 Fiscal Year Annual Research Report
1990年代以降の日本の就業・失業構造の変化に関する実証分析
Project/Area Number |
18330047
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
照山 博司 京都大学, 経済研究所, 教授 (30227532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 聰一 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (60262838)
玄田 有史 東京大学, 社会科学研究所, 助教授 (90245366)
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Keywords | 雇用機会 / 少子化・高齢化 / 若年労働市場 / 失業 / 無業 / ニート / 所得格差 |
Research Abstract |
2000年代の雇用変動に関し、2001年から2002年に、かつて経験したことがないほど大規模な既存の雇用機会の消失があったこと、2002年以降、雇用状況は急速に回復したが、新たな雇用創出の拡大はみられず、ほとんどが人員調整プロセスの完了による雇用消失幅の削減によってもたらされたことを示した。その意味で2000年代半ばの雇用回復は、雇用調整を通じた一時的なものであると考えられる。 少子高齢化と雇用の問題に関し、1990年代の不況下で、中高年既雇用者の雇用を保障するため新規採用の需要が縮小し、若年の雇用機会が減少したことを確認した。また、高齢化が失業率を引き下げる効果は1990年代までは小さかったが、近年拡大傾向にあることを示した。一方、少子化に関する労働市場の影響を、セックス頻度と就業状況に着目して分析し、セックス頻度は、無業状態にある若者ほど少なくなる他、就業者であっても、労働環境の悪化が少子化をもたらす一因となっているという示唆を得た。 若年無業の増加に関し、ニートとよばれる無業者には、若年のなかでも就業による期待収益率が相対的に低い層(長期無業経験者など)ほどなりやすい傾向があることを発見した。高所得世帯に属する若年ほどニート状態を選択しやすいという所得効果が近年は弱まり、低所得世帯から就業希望表明しない若者が増えるなど、貧困世帯の増大も若年無業の増加と連関していることも明らかとした。さらに、若年労働市場の地域間格差がライフイベントの格差にどのような影響を及ぼすかを検討し、フリーターの多い地域では結婚年齢や子どもを持つ時期が遅くなることを示した。出身地が勤労所得にもたらす影響の分析により、勤労所得は、地方出身者で都市部に居住している者が最も高いことを示した。この理由は、地方の社会的・経済的に余裕のある家庭の子弟が都市部に出てきやすいことによる。
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