2008 Fiscal Year Annual Research Report
1990年代以降の日本の就業・失業構造の変化に関する実証分析
Project/Area Number |
18330047
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
照山 博司 Kyoto University, 経済研究所, 教授 (30227532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 聰一 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (60262838)
玄田 有史 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (90245366)
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Keywords | 雇用機会 / 少子化・高齢化 / 若年労働市場 / 失業 / 無業 / ニート |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本の失業率が1990年代以降急上昇した原因を、家計・企業などのミクロ的側面と景気などのマクロ的側面双方から探るための包括的実証研究を行うことであった。マクロ的側面からの分析は前年度までにほぼ終了し、持続的失業率上昇には、労働需給のミスマッチや労働力再配分が果たした役割は限定的であり、失業に対する景気の影響が長期間に及ぶ構造の発生が重要であったことを示した。先行研究の展望や本研究の前年度までの成果から、失業の持続性が高まった要因として、非正規労働などの不安定な雇用形態の拡大が重要であることが示唆されたため、今年度は、ミクロ的側面から、労働者の雇用形態の転換に関連する実証分析をさらに進めた。具体的には、ミクロ経済データ(「就業構造基本調査」、「労働力調査」など)を利用した分析によって、前職が非正規雇用だった離職者について正規雇用への移行を規定する要因を分析し、1、失業率の低い地域ほど移行が容易となること、2、専門性に基づく個別の労働需要の強さが正規雇用への移行を左右すること、3、非正規雇用としての離職前の同一企業での継続就業経験が正規雇用の機会の獲得を有利にすることを示した。また、若年労働者について、労働力状態を、就業・非就業のほか、正規雇用・非正規雇用ならびに失業・非労働力などに区分し、各状態間の移行に対して、調査年と学卒年の有効求人倍率水準がもたらした影響が、学歴および性別によって大きく異なることを示した。本研究では、1990年代以降の失業率上昇の要因について、関連するこれまでの数多の研究成果を総括し、統一的観点から独自の実証分析を重ねることによって、一定の結論を得ることができたと考える。
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