2006 Fiscal Year Annual Research Report
世代会計による人口減少・高齢社会での世代間衡平に関する研究
Project/Area Number |
18330056
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉田 浩 東北大学, 大学院経済学研究科, 助教授 (60275823)
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Keywords | 財政学 / 高齢化 / 社会資本 / 世代会計 / 公平性 / 所得再分配 / 公共部門 / 行政改革 |
Research Abstract |
本年度の研究では、人口減少下の経済において、社会資本形成が各世代の効用に及ぼす影響を世代会計モデルおよび一般均衡モデルを用いて分析した。 1.はじめに、世代会計モデルを用いて、最近の日本の社会資本投資のための支出の現状と世代間の公平性に及ぼす効果について、社会資本投資水準を現状のままとした場合、50%削減した場合、100%削減した場合の3つのシナリオを用いて検討した。その結果、社会資本の抑制だけでは将来の政府債務(世代間不均衡)は完全には解消しないことが示されている。ただし、この世代会計では社会資本投資削減による生産力の減少や受益の減少等の負の効果は数字には表れてこない点に留意しなければならない。 2.また、高齢化が進行する社会において望ましい社会資本投資の時期と方法を知るため、Auerbach and Kotlikoff(1987)の2期間世代間重複のシンプルなモデルを用いたシミュレーション分析を行い、社会資本整備の効果を世代別に検証した。その結果、 (1)高齢化の過程においては、労働者1人当たりの資本ストックが増加する資本深化が起こるが、それによって必ずしも各世代の生涯での効用は高いものとはならないこと、 (2)若年労働者の少ない高齢社会であっても、各世代の生涯効用で評価すれば、より大きな社会資本が常にふさわしいというわけではないこと が示された。 さらに、社会資本投資の財源を借り入れによって調達した場合は、民間資本の一部がクラウド・アウトされるため、税によるファイナンスが望ましいことも指摘された。これに基づき、社会資本投資が最適水準より小さい経済においては、移行過程において徐々に増税を行うことで、世代間の効用の不均衡を大きく拡大することなく、高齢化と人口減少が起きた後の将来の世代の効用を改善することが可能である例が示された。
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