2007 Fiscal Year Annual Research Report
世代会計による人口減少・高齢社会での世代間衡平に関する研究
Project/Area Number |
18330056
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉田 浩 Tohoku University, 大学院・経済学研究科, 教授 (60275823)
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Keywords | 高齢化 / 世代会計 / 社会保障改革 / 社会資本 / 世代間格差 / 比欧 / 児童福祉 |
Research Abstract |
本研究は高齢化による世代間不均衡の問題等を世代会計等の定量的な手法により分析することであった。今年度は、以下の4点の研究成果が得られた。 (1)年金の税方式化および後期高齢者医療制度の導入が将来世代の負担に及ぼす効果を世代会計モデルで推計し、前者は世代間不均衡をやや改善するものの後者の政策はほとんど効果がないことがわかった。この成果は第65回日本財政学会(京都大学)にて報告された。(2)高齢化の進展とそれに対応した社会資本(公共資本)の整備の水準のあり方について、2期間の世代重複(OLG)モデルによる定量的なシミュレーション計算を行った。その結果、高齢化による少労働力社会であっても、社会資本が多いほど良いというわけではなく、いっぽう現状では多くの都道府県別で社会資本が過小であることがわかった。これらの結果は『フィナンシャル・レビュー』第89号に掲載された。(3)北欧における児童福祉政策の状況調査の結果、ノルウェーでは最大年額70万円近い児童手当が認められていること、スウェーデンでは子供の与える玩具に関し、子供に購買欲を煽るような直接的な広告活助が禁じられていることなどがわかり、金銭面・政策面で北欧の児童福祉の進んだ水準が明らかとなった。この成果は『玩具福祉研究』第7号に掲載された。(4)社会保障での世代間比重に関し、スウェーデン、フィンランド、日本について、最近20年間を定量的に比較する指標を作成した。その結果、北欧諸国は高齢者への社会保障の相対的重みが一定又は漸減しているのに対し、日本はとび抜けてその重みが増大してきている。この成果はスウェーデンのウプサラ大学で報告され、スウェーデンでは高齢者福祉削減の明確な政策転換の議論があった訳ではなく、子供のいる世代の経済的状況を支援するという文脈の中で結果として比重が低下してきたことが分かった。
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