2008 Fiscal Year Annual Research Report
変動期における高校生の社会意識とアスピレーションの形成過程
Project/Area Number |
18330100
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木村 邦博 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 教授 (80202042)
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Keywords | 階層・階級 / 教育 / ジェンダー / 社会意識 / 職業 / 社会移動 / アスピレーション / 労働市場 |
Research Abstract |
2007年に実施した「教育と社会に対する高校生の意識」第6次調査の自由回答部分のコーディングと追加データ入力を4〜5月と8月に実施し、公式データセットを完成させ、研究代表者・連携研究者の各々が研究テーマに応じた分析を行った。分析結果については8月と11月の研究会で議論を行った。並行して7月の第47回東北地区私学教育研修会や9月の日本行動計量学会第36回大会で研究報告を行った。これらの過程を経た上で調査報告書原稿を執筆し、高校教員との懇談会(1月)で受けたコメントを踏まえ、3月に『教育と社会に対する高校生の意識-第6次調査報告書-』を刊行した。この報告書は、調査依頼校や教育行政機関に配布した。主な知見は次のとおりである。(1)約20年間に高校生では男女ともに専門職志向が高まったが、近年では同時に安定志向も強まった。(2)近年、フリーターに対する高校生のイメージが急激に悪化した。(3)約20年の間に特に女子で大学進学希望率が増加し、男女差がほとんど無くなった。(4)近年、高校生の学習意欲が高まったものの学習方法に変化は見られない。(5)保護者から高校生への期待に関しては、自律性よりも同調性を重視する傾向が高まった。(6)高校生の規範意識には約8年間で変化が見られなかった。(7)近年、高校生が家族や先生に相談する傾向が強まった。(8)父不在世帯の高校生では大学進学希望率が低くなる傾向があり、これには経済的要因が大きいと考えられるものの、特に女子では文化資本が豊富であるのに文化資本の効果が小さいという傾向も見られた。(9)自由記述欄では保護者・高校生ともに「格差」や「ゆとり教育」に関する言及が増えた。以上の知見には、時代の変化の反映といえるものもあるが、時代の変化を強調する通説と異なり変化が見られないものや通説で説明できないものも多かった。
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