2006 Fiscal Year Annual Research Report
中国内漢族・モンゴル族・朝鮮族の言語文化変容に関する社会言語学的研究
Project/Area Number |
18330110
|
Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
李 守 昭和女子大学, 生活科学部, 助教授 (80276617)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 喜之 昭和女子大学, 人間社会学部, 助教授 (50307071)
呼和 巴特爾 昭和女子大学, 人間文化学部, 助教授 (80338540)
|
Keywords | 言語学 / 社会学 / 中国語 / 外国語 |
Research Abstract |
市場経済化と高度成長、ならびに漢族の大規模な移住が、少数民族の二言語使用を促進する動静を、8月、3月の現地調査(延辺大学,前郭尓羅斯蒙古族中学)の結果、うかがい知ることができた。モンゴル族及び朝鮮族はともに最高学府を頂点とする教育体系を有し、教育熱心である。市場経済化の時流に乗るためには、民族の優秀な人材が必要とされる。少数民族子弟は中央の難関大学へ入学できるよう、漢語(中国語)を懸命に学ぶ。中国政府の方針である双語(二言語)制は、かれらが漢語を習得する強い動機となる。 問題は、少数民族にとって、双語教育が漢語の普及のみならず、現時点では民族語の維持(maintenance)をも視野に入れた制度であると目されている点である。モンゴル族と朝鮮族における漢語への転換(shift)は相当程度、進行しているものと推察される。漢族と55の少数民族が「中華民族」として多元一体の構造を有するとは、社会学者・費孝通が提唱し、中国少数民族政策の公式見解とされている。この多元一体構造を担保するのは、双語制にほかならない。少数民族は自己の言語文字を使用し発展させる自由を有する一方、双語制のもとで漢語と接触しながら民族語を維持継承する方途を模索している。 研究代表者は夏季休暇中、客員研究員として延辺大学に滞在し、中国朝鮮族における言語規範の確立過程を1次資料によって検証する計画である。朝鮮語の規範化は1945年以降、朝鮮半島の南北政権のもとでも、模索の段階にあった。同じく社会主義体制をとる北朝鮮の言語政策を視野に入れながら、漢語との相克のなかで、朝鮮族が独自の言語規範を確立する過程を検証する。研究分担者は内モンゴル自治区で、双語制とモンゴル語の現状を調査する。漢語とモンゴル語、漢語と朝鮮語の双語制を比較検討することで、市場経済化が進行する中国における言語文化変容、民族政策の特色を分析する。
|