2006 Fiscal Year Annual Research Report
「心のデザイン」モデルによる視覚芸術の特性と脳内基盤の解明
Project/Area Number |
18330151
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
行場 次朗 東北大学, 大学院文学研究科, 教授 (50142899)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 佳世 九州大学, 大学院人間環境学研究科, 教授 (60239176)
北岡 明佳 立命館大学, 文学部, 教授 (70234234)
川畑 秀明 鹿児島大学, 教育学部, 助教授 (70347079)
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Keywords | 感性 / 芸術 / 視覚理論 / 知覚体制化 / 神経美学 / アウェアネス / クオリア |
Research Abstract |
R.L. Gregory(1998)は、知覚理論研究の中で、仮説生成装置としての脳のはたらきを強調してきたが、近年になって「心のデザイン(mind-design)」として彼の考え方をまとめている.本研究では、このモデルに、ボトムアップ(クオリアを生成)、トップダウン(アウェアネスを生成)、知覚的ルールの主要な3つのストリームを見出し(行場,2002;2003)、それらのストリームをマトリックス的に組み合わせて、視覚芸術の基底をなす共通項とその心理・脳科学的基盤を明らかにすることを目的とした。人間情報処理の主要な3つのストリームに由来するクオリア、アウェアネス、知覚ルールを次元的にクロスさせて、体系的な分析を挑む研究は世界に類がない。 その結果、今年度の研究により、P. Kleeの作品群や、フォーヴィズムやキュービズム、シュールレアリズムの作品も含めて、それぞれのタイプに属する複数の作品の共通特性がうきぼりになり、それらの特性のほとんどが特定の視覚機構や脳機能によって説明可能であることがわかった。したがって、心理・脳科学的には、視覚美の感覚は一つではなく、多数存在し、それぞれが機能的に特殊化した視覚処理システムの活動に結びついていると考えられる。最近の研究(Kawabata & Zeki, 2004)では、眼窩前頭前野が美しさの程度に対応して活性化することが報告されているが、眼窩前頭前野などの活動は、美を感受するプロセスそのものに関与するのではなく、美感がもたらす報酬や強化の側面との関連を強く反映した結果である可能性がある。本研究で示した分類法の妥当性とともに、美を感受するモジュールがストリームごとに多重に存在するのか、あるいはそれらのストリームの出力が統合されたところにユニークに存在するのか、来年度のニューロイメージング研究や理論展開が待たれる。
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Research Products
(7 results)