| Research Abstract |
行為が視覚的注意に及ぼす影響を検討するため,結合探索課題を用いて2つの研究を行った.研究1では前年度の実験で得られた知見をより確かにするために,二次元平面において実験を行った.具体的には,標的刺激が呈示される前に,手がかりを与えることで注意を操作した.標的刺激検出後にその刺激にポインティング動作を行う条件と,マウス操作によって標的位置を報告する条件が用いられた.両条件とも,手がかりの効果に関して上半視野と下半視野で有意な差は見られず,行為の効果も見いだされなかった.研究2では三次元実空間に実物対象を配置し,特に奥行方向での注意配分に関して,行為の実行が注意配分に及ぼす影響を検討した.標的刺激検出後にその刺激を把持することを要求した(把持条件).統制条件として,マウス操作によって標的刺激位置を報告するよう要求した。両条件とも,実験参加者の手の届く範囲に刺激は配置された.結果,統制条件では実験参加者に近い領域で,遠い領域に比べて探索パフォーマンスが有意に低かったのに対し,把持条件では奥行領域間で探索パフォーマンスに有意な差は見られなかった.これらのことから,対象を認識するために探索を行う場合には,手の届く範囲よりも遠い領域に注意配分が多いことが示唆されたまた,対象に対して動作を行うために探索する場合には,認識するだけの場合に比べて,自らの身体に近い領域へと,注意配分の中心が移動することが示唆された.
また,本研究課題で行ってきた実空間内での運動物体の表象の形成に対して行為が及ぼす影響についてさらに詳細に検討するために,これまで物体が勾配を下ることで運動を観察していたものを,モーターを用いて自走できるよう実験装置を改良した.これによって,できる限り一定の速度で対象を観察でき,かつ後退運動の検討を可能とした.
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