2006 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者のワーキングメモリの訓練とその神経基盤に関する研究
Project/Area Number |
18330156
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Research Institution | Osaka University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
苧阪 満里子 Osaka University of Foreign Studies, 外国語学部, 教授 (70144300)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
苧阪 直行 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授 (20113136)
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Keywords | ワーキングメモリ / 訓練 / 高齢者 / 前頭前野 / 前部帯状回 |
Research Abstract |
本研究では、ワーキングメモリの中核をなす中央実行系の機能強化訓練に取り組むことを目的とした。中央実行系は、ワーキングメモリがスムーズに機能する上での統括機能として働き、そこでは注意の焦点化と抑制制御が特に重要であると考えられる。そこで、この二つの注意制御機能をつかさどると考えられる前頭前野の背外側部(DLPFC)と前部帯状回(ACC)に着目して、その機能を高める訓練を計画した。強化訓練の対象は、ワーキングメモリの脆弱化が問題となる高齢者とした。なお、若年者の中央実行系における注意制御機構の神経基盤についても、高齢者と同様に検討を行なった。高齢者においてワーキングメモリ機能が脆弱化する原因として考えられるのは、単純な記憶保持能力が低下することではなく、処理とともに保持されるべき情報が欠落することによるものが大きい。そこで、本研究では訓練方法として、処理と保持を同時に進める二重課題の遂行を計画した。さらに、中央実行系の注意制御の中でも重要である注意の焦点化を高めるため、標的に注意を向ける働きを促進させる目的から標的を描画して、注意を焦点化した上で維持する訓練方法を用いた。訓練の効果は、行動データには遂行成績の向上と反応時間の短縮化が確認された。さらに、訓練前と訓練後にfMRIを用いて脳の活動領域の確認をおこなう計画を立てた。その結果、訓練前には高齢者の脳活動にDLPFCの活動が確認されたが、ACCの活動はほとんど認められない状態であった。しかし、訓練後の測定では、DLPFCとともにACCの活動の上昇が認められた。この結果は、訓練により、中央実行系の制御がスムーズに機能していることを示唆するものと考えられる。一方で、個人差も認められ、次年度において検討すべき課題であると考えられた。
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