2007 Fiscal Year Annual Research Report
高機能広汎性発達障害児者の動的な対人認知過程に関する眼球運動指標を用いた基礎研究
Project/Area Number |
18330197
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
安達 潤 Hokkaido University of Education, 教育学部, 教授 (70344538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 真善 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (50344544)
萩原 拓 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (00431388)
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Keywords | 高機能広汎性発達障害 / 対人認知 / 動画刺激 / 映画視聴 / 表情認知 / ストーリー理解 |
Research Abstract |
平成19年度は、平成18年度から実施してきた「会話ペア検出課題」の実験枠組みが確定し、さらに、平成19年度から取り組んだ「映画視聴課題」についても、実験枠組みが確定し、得られた実験結果を、平成19年度の児童青年精神医学会で発表した。(1)の結果については、HF-PDD者は会話時における話し手の音声・行動と聞き手の行動との同期性の知覚が弱い一方、物理的な同期性の知覚には問題がなかったところから、対人交流に関わる同期性の知覚に特異的な困難さを持つことが、反応時間データおよび眼球運動データから示唆された。眼球運動データが示したことは、対人認知における同期性の知覚の弱さが、一注視あたりの注視時間ではなく、課題を遂行し終わるまでの注視数に基づくものだということである。さらに、課題画面の注視行動の分析からは、HF-PDD者は課題解決に関わる情報をほとんど持たない画面領域への注視数が多いという結果が得られた。この注視行動の効率の悪さは、反応時間では統計的に差が見られなかった統制条件においても示された。結果、HF-PDD者は基本的に注し行動の効率が悪いが、対人認知場面ではその特性が遂行に強く英供すことが示唆された。(2)については、映画視聴時の注視行動として、HF-PDD者は人物ではなく背景を見る傾向が高く、人物を見る場合でも口元に注目する傾向が高いことが示された。また定型発達者では対人交流文脈に適合する形で予測的に注視を移動させるが、HF-PDD者ではそういった注視行動特性が見られないことが示された。また映画視聴課題の発展課題として、映画のストーリーの意味理解(文脈情報)が登場人物の表情認知に及ぼす影響を予備的に検討した。実験結果およ内省政報告から、HF-PDD者はストーリーの展開を追いかけるのに手一杯で、登場人物の表情を十分に把握することができていないことが示唆された。
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