2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18340044
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
辻井 正人 Kyushu University, 大学院・数理学研究院, 教授 (20251598)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新居 俊作 九州大学, 大学院・数理学研究院, 准教授 (50282421)
石井 豊 九州大学, 大学院・数理学研究院, 准教授 (20304727)
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Keywords | 力学系 / カオス / 関数解析 |
Research Abstract |
昨年度の研究では,接触アノソフ流(特に,負曲率多様体上の測地流)に対するKoopman作用素について,適切な関数空間を設定する事で良いスペクトル的な性質(擬コンパクト性)を実現する事に成功した.本年はその成果を応用して,力学系のゼータ関数の零点の分布について研究を行った.まず,スメールによって定義された古典的な力学的なゼータ関数について考えたが,困難にぶつかり思ったような結果が得られなかった.そのことから,ゼータ関数の定義そのものに疑問を持ち,より根本的な部分から考察を進めた.その結果,数理物理学者のGutzwillerとVorosによって定義された半古典ゼータ関数と呼ばれる対象は,例えば負の定曲率多様体の測地流の場合には古典的なゼータ関数と(1/2だけの平行移動を除いて)一致するが,そうでない場合には一般には異なることや物理的な背景を持っている事からより意味のある研究対象である事がわかった.半古典ゼータ関数に対して,昨年度の研究成果を当てはめたところ,接触アノソフ流の特異点(零点と極)は虚軸の近傍の右側には有限個しかない事を示す事ができた.これはセルバーグの古典的な結果の可変曲率の場合へのある種の一般化になっている.さらにセルバーグの結果との比較によれば,虚軸の近傍にある零点は測地流の場合には多様体のラプラシアンの固有値と関係する事が予想される.年度後半はこの点について研究をすすめている.転移作用素の性質を精密に分析する事で虚軸の近傍に無限個の零点が存在し,弱い意味でのワイルの法則をみたす事についてはほぼ解明できたと考えている.また,その過程でそれらの零点に関係した転移作用素の部分の性質を取り出した,「量子馬蹄写像」とでも呼ぶべき対象を考案した.
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Research Products
(5 results)