2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18340049
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
田村 英男 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 教授 (30022734)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣川 真男 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (70282788)
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Keywords | 関数方程式の大域理論 / スペクトル理論 / 散乱理論 / シュレディンガー作用素 / 準古典漸近解析 / アハラノフ・ポーム効果 |
Research Abstract |
量子力学が研究対象とするミクロな世界では古典力学的な観点から説明できない注目すべき現象がしばしば生じる。このような現象は量子効果とよばれ、ひとつひとつが数学解析の格好の題材を提供している。本研究は、スペクトル理論において培われた漸近的手法を駆使し、量子力学に現れる量子効果の数理現象を追究する目的で行われた研究である。スペクトル漸近性に関わる2つの課題を扱った: (1)複数個のソレノイド磁場による散乱における準古典漸近解析:量子力学にしたがう粒子が磁場の中を運動するとき、磁場ポテンシャル自身が直接関与する。量子力学の根幹に関るこの現象は、アハラノブ・ボーム(Aharanov-Bohm)量子効果(通称AB効果)として知られている。この課題では、2つのソレノイドによる2次元磁場散乱を考え、準古典極限における散乱位相の漸近挙動を解析した。複数個のソレノイド磁場による散乱においては、磁場の中心間で振動する古典軌道が存在し、いわゆる捕捉現象が発生する。得られた漸近公式を通して、AB効果による「波動性」と捕捉効果による「粒子性」がどのような関わりを有するかを明らかにし、その結果を2編の論文として公表した。 (2)長距離型ポテンシャルよる散乱に対する低エネルギー領域での漸近解析:この課題については、残念ながら進展はなかったが、低エネルギー領域での新しい漸近的手法が外国人研究者によって最近開発されている。これらを糸口にして、グローリー(Glory)効果にみられるような引力型ポテンシャルによる後方散乱振幅の低エネルギー領域での特異性の発現の解明を継続研究課題として追究したい。
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Research Products
(3 results)