2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヘルメスによる新しい実験手法を用いた陽子と中性子のスピン構造の研究
Project/Area Number |
18340058
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
柴田 利明 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 教授 (80251601)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮地 義之 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 助手 (50334511)
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Keywords | クォーク / 陽子 / 中性子 / スピン / グルーオン / 電子 / 深非弾性散乱 / 漸近的自由性 |
Research Abstract |
平成18年度には、ドイツ・ハンブルクのDESY(ドイツ電子シンクロトロン研究所)において、国際共同研究HERMESに参加し、高エネルギー電子と陽子標的の深非弾性散乱実験を行った。実験データは、東工大にあるデータ解析拠点で解析した。 HERMES実験のすべての測定器は性能を発揮して稼動しており、順調に実験データを取ることができた。電子ビームは、DESYの加速器・貯蔵リングHERAによるものである。一方、標的は陽子、重陽子、そのほかの原子核である。深非弾性散乱と呼ばれる、電子-クォークの弾性散乱を用いて研究をした。 陽子と中性子(総称して核子と呼ぶ)は基本的にクォーク3個から構成されているので、従来は、核子のスピン1/2はクォークのスピン1/2の重ね合わせによるものと考えられていたが、約20年前に、クォークのスピンは核子のスピンにわずかしか寄与しない、という実験結果が出たので、現在では、世界の主要な研究所のほぼすべてにおいて、この「核子のスピンの問題」を解明するために実験が行われている。HERMESもその1つである。 平成18年の成果は、特に、陽子標的のまわりに、電子散乱に伴って発生する粒子を検出する「反跳粒子検出器」を導入し、従来とは異なる新しい実験手法を用いて測定を行ったことである。これにより、標的陽子がこわれずに、高エネルギーのガンマ線が発生した事象、すなわち深仮想コンプトン散乱(Deeply Virtual Compton Scattering)が他のバックグラウンドから分離して明確に測定できるようになった。
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Research Products
(5 results)