2006 Fiscal Year Annual Research Report
半導体表面および界面の2次元系とスピンに関する研究
Project/Area Number |
18340080
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡本 徹 東京大学, 大学院理学系研究科, 助教授 (60245371)
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Keywords | 低温物性 / 表面・界面物性 / 半導体物性 / 量子閉じ込め |
Research Abstract |
InAs劈開表面に鉄を蒸着して誘起した2次元電子系に対して、面内磁場に対する大きな正の磁気抵抗効果を測定した。シュブニコフドハース振動の角度依存性から、2次元電子系自身のスピン偏極は小さく、磁気抵抗効果の直接の原因でないことがわかった。吸着磁性原子と2次元電子スピンとの相互作用の可能性が示唆される。InSb劈開表面に銀を蒸着して誘起した2次元電子系において整数量子ホール効果が観測され、スピン分離に対応する奇数量子ホール状態も観測された。これまで劈開表面2次元電子系の研究は、4He冷凍機を用いた1.5ケルビン程度の温度領域で行っていたが、新たに蒸着、劈開機構を組み込んだ3He冷凍機を作製し動作確認を行った。この装置には、さらに電子スピン共鳴やサイクロトロン共鳴を行うためにミリ波を導入することも可能である。 電子温度変化に伴い核スピン偏極が誘起されることを示すため、GaAs界面2次元電子系のランダウ準位充填率ν=3の量子ホール効果ブレークダウン領域において実験を行った。電流方向に対してチャネル幅が段階的に変化する試料を用いた。電子の流れに対してチャネル幅が広がる場合には、電子温度の低下に伴うdownからupの電子スピン反転が起こり、狭くなる場合には電子温度の上昇によるupからdownの電子スピン反転が起こると予想されたが、これらに対応する動的核スピン偏極に相当する抵抗変化が観測された。半導体2次元系における電子スピン反転に伴う動的核スピン偏極は、これまで、分数量子ホール系のスピン偏極非偏極遷移を用いたものとエッジ状態間遷移を用いたものが盛んに研究されていたが、電子温度の変化を利用したものは我々の研究が初めてである。 Si/SiGe2次元系における電子スピン共鳴における抵抗変化の機構を明らかにし、スピン緩和時間に対する新しい知見を得た。
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