2008 Fiscal Year Annual Research Report
半導体表面および界面の2次元系とスピンに関する研究
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18340080
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡本 徹 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 准教授 (60245371)
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Keywords | 低温物性 / 表面・界面物性 / 半導体物性 / 量子閉じ込め |
Research Abstract |
平成19年度の研究により、InAs壁開表面に鉄を蒸着して表面反転層を誘起したハイブリッド系において、特定の被覆率領域で磁気抵抗曲線の明瞭なヒステリシスが観測された。1原子層以下の鉄薄膜の磁気的状態を2次元電子系の電気伝導を通じて観測した初めての研究成果である。本年度は、(1)残留磁気抵抗効果に見られる磁揚中冷却と無磁場冷却の違いを詳細に調べた。(2)磁場掃引後の長時間緩和現象を様々な条件化で調べた。(3)残留磁気抵抗効果の磁場方位依存性、温度依存性を詳細に調べた。電気抵抗測定に対する(1)一(3)の実験結果は、これまでバルクのスピングラス系に対する磁化測定において観測された振る舞いとよく似ており、鉄超薄膜においてスピングラスが実現されたことを強く示唆する。鉄薄膜の厚さは1原子層以下であるので、2次元系であると考えられる。これまで、2次元スピングラスについては、その有限温度における存在を否定する計算結果がいくつか報告されてきたが、本研究は再考を促すものである。今後の発展が大いに期待される。 Si/SiGeヘテロ構造2次元電子系において、軌道量子数とスピン状態が異なる2つのランダウ準位を磁場角度の調節により交差させ、電気伝導測定を行った。本年度は、測定系の改良を行い、垂直磁場を固定した状態で磁場の絶対値を変化させて測定を行うことで、ランダウ準位充填率を固定して測定を行うことに成功した。量子ホール状態間の遷移領域において明瞭なディップ構造を観測し、新しい電子状態の可能性を議論した。
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