2006 Fiscal Year Annual Research Report
電子・振動励起による単一吸着分子ダイナミックスの理論
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18340085
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
上羽 弘 富山大学, 理工学研究部(工学), 教授 (70019214)
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / トンネル効果 / 振動励起 / 吸着 / 表面反応 / フェムト秒 / エネルギー移動 |
Research Abstract |
研究計画で想定した以上の成果を順当に挙げることができた。まず、走査トンネル顕微鏡を用いた非弾性トンネル電子に誘起された単一分子運動の反応速度に対するトンネル電流、およびトンネル電圧依存性を微視的な非弾性トンネル電流の表式を用いて計算し、その電圧に関する二次微分をとることで、非弾性トンネルスペクトルの実験等では直接得ることができない振動励起に関与する振動モードのエネルギーとその振動緩和に関する情報が直接得られることを初めて理論的に明らかにした。この理論は世界に先駆けた提案であり、Physical Review Bに掲載される論文の中でも特に緊急性・重要性を認められた論文のみが掲載されるRapid Communicationとして選ばれ、投稿から2ヶ月で掲載された。さらに、電子・振動励起によって誘起される吸着分子の運動で吸着分子の振動モード結合が重要な役割を果たすことを種々の実験結果にもとづいて、その素過程を理論的に明らかにした。これらの成果は平成18年9月にサンフランシスコで開催された米国化学会総会および12月にフランスのリヨンで開催されたCECAMワークショップ"Inelastic effects in transport at atomic scale"での招待講演として発表した。 さらに、フェムト秒レーザパルス励起で金属内に作られた過渡的なホットエレクトロンからの熱移動によって、吸着分子の振動温度が過渡的に上昇し、吸着分子の運動が誘起される"表面フェムト光化学反応"の分野で従来の考え方を大きく超えた新しい理論提案に着工した。従来の熱移動方程式が実は吸着分子の運動に関与するポテンシャルが調和振動と考え、さらに電子系との線形結合に対してのみ成立することを解析的に明らかにして、吸着分子のダイナミックスを調べるために非調和ポテンシャルをあからさまに考慮する必要があることを見出した。この新規な理論にもとずく具体的な数値計算にも着手し、その成果は次年度にまとめることができると考えている。
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Research Products
(4 results)