2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18340096
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野尻 浩之 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (80189399)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大島 勇吾 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (10375107)
古川 裕次 北海道大学, 理学研究科, 助手 (50280863)
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Keywords | カイラリティ / 量子スピン / 量子相転移 / 超低温 / 強磁場 |
Research Abstract |
本研究の目的は、一次元と二次元の中間に位置し、特異な構造を持つ三角スピンチューブの量子相転移と磁気励起をスピンカイラリティの役割を軸として実験的に解明し、それを通してカイラリティや軌道などの内部自由度を有する系の磁性の新しい展開を目指す事にある。 本年度は、我々が見いだした世界で唯一のスピンS=1/2量子スピンチューブである[(CuCl_2tachH)_3Cl]Cl_2の基底状態を超低温域のNMRと比熱測定により研究した。磁気比熱はチューブの低次元性を反映して磁気相互作用に相当する温度でブロードな山を示したあと、さらに低温で励起ギャップが存在するような急激な減少を一旦示す。ところが、比熱はゼロに至らずに、0.5K以下から低温では温度に対して直線的な比熱を示す。また100mK以下まで磁気相転移の兆候はない。これらの結果は、スピンチューブの基底状態が状態密度の小さなギャップレス状態で有ることを示す。また、中間領域におけるギャップ的な振る舞いは、チューブの自由度の一部が比較的高温で失われる事を示す。低温での状態密度は全体の1/3から1/4であり、軌道に相当するエントロピーが凍結する事を示唆する。一方、ダイナミックスを反映するNMRの測定は、このエントロピーの凍結に伴って1/T1のピークを示す。さらに低温ではT2の異常もあり、量子スピンチューブの基底状態は特異なTL液体である可能性がある。これらの結果は本年度の物理学会の一般講演やシンポジウム講演で報告された。さらに、チューブの磁気パラメータを変化させて量子相制御を行うために、重水置換試料の作成にも成功した。また関連研究として偶数スピンチューブや古典スピンチューブの物質探索を進めるために、これらの基礎となる磁気リングの物性評価を進めた。
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Research Products
(2 results)