2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18340099
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大熊 哲 東京工業大学, 極低温物性研究センター, 助教授 (50194105)
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Keywords | 第2種超伝導体 / 渦糸状態 / 量子ゆらぎ / ノイズ / 渦糸ダイナミクス / 超伝導絶縁体転移 / アモルファス膜 / 次元性 |
Research Abstract |
(1)量子渦糸液体(QVL)相における渦糸ダイナミクスの解明 量子ゆらぎが渦糸ダイナミクスに及ぼす影響,あるいはQVL相における渦糸ダイナミクスがいかなるものかは理論・実験共未知である。本研究ではまず,熱的液体相からQVL相への移り変わりに伴う渦糸ダイナミクスの変化を,渦糸フローに伴って発生する電圧ノイズを中心とする動的測定によって明らかにすることを目指した。試料はエッジ効果が効かないこと,およびQVL相の存在を確認したアモルファス(a-)Mo_xSi_<1-x>膜およびa-Mg_xB_<1-x>膜を用いた。その結果,試料の抵抗値(量子ゆらぎの強さ)やアモルファス物質の種類によらず,渦糸フロー電圧のゆらぎδV(t)の確率分布Pが渦糸の進行方向に裾をもち,かつその振幅が増大する異常な渦糸フローが,QVL相付近において現れることがわかった。詳細に見ると,Pの非対称性が現れる温度は,QVL相より若干高温側であることがわかった。またノイズスペクトラム測定により,QVL相では,最大で数千個の渦糸から形成される渦糸バンドルのランダムなdepinning-pinning過程がノイズの起源であることがわかった。これはQVL相における量子トンネルあるいは量子クリープの存在を示唆している。 (2)電圧ゆらぎ測定による2次元(2D)渦糸相図の決定 これまでに2D系においては,通常の電気抵抗測定ではQVL相の存在を示す証拠は得られていない。そこで本研究では動的測定により,2D渦糸相図の作成を試みた。もし完成すれば初の2D渦糸グラス転移及び2DQVL相の実証につながり,2D超伝導絶縁体転移の問題にも新たな理解と決着をもたらす。これまでのところ,3Dに比べるとずっと高温域(液体相)からδV(t)の非対称性が観測された。これは,液体相中に固体片が共存する渦糸スラッシュ的な状態の形成を反映していると考えられる。QVL相の存在を示唆するδV(t)の振幅の増大は,極低温高磁場でのみ観測された。
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Research Products
(7 results)