2007 Fiscal Year Annual Research Report
分子性三角格子巫Mott絶縁体のスピン液体状態の熱的検証
Project/Area Number |
18340103
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中澤 康浩 Osaka University, 大学院・理学研究科, 教授 (60222163)
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Keywords | 熱容量 / 二次元三角格子 / スピン液体 |
Research Abstract |
本研究は、κ型の構造をもつ電荷移動塩κ-(BEDT-TIF)_2Cu_2(CN)_3の基底状態を熱力学的な立場から研究し、スピン液体としての可能性を検討するために計画された。この物質は2次元層内で、ドナー分子であるBEDT-TTFが強い二量体構造をつくって配列する。この二量体が等方的な三角格子を形成し、電子が強相関効果によって局在することでスピンの液体状態を形成する。H18年度にこの物質の超低温領域での熱容量を測定するため、東北大学金属材料研究所の強磁場超伝導材料研究センターに設置された希釈冷凍装置(Oxford社製)に我々の緩和型熱容量測定装置をセットアップし75mKまでのセル開発、測定整備を開始した。本年度は、この実験の継続と、大阪大学に新たに導入した15T磁石の温度可変インサートに挿入可能な小型簡易型希釈冷凍機に同様のセルを組み込むことにより熱容量測定を行うための装置開発を進めた。この結果、極低温領域で100μg程度の微小単結晶を用いた熱的な情報を引き出すことが可能となり、本物質の極低温領域での熱容量が絶縁体でありながら温度に比例する項(γT)をもち、そのγの値は12mJK^<-2>mol^<-1>に達し、バンドを形成し金属になっている塩のものに近いことが明らかになった。この結果は、本物質のスピン液体状態が電子のFermi面に相当するようなエネルギー状態を形成し、そこでの有限な状態密度に比例したギャップない励起構造を作っている可能性を示唆するものである。さらに、C_pT^<-1>vsT^2のかたちのプロットを行うことによって得られる傾きが他の反強磁性Mott絶縁体と比較して約2倍程度大きくなることが見出された。このことはスピン系の励起に熱容量に対してT^3の温度依存性を与える項が存在することを示唆している。さらに、磁気励起の強磁場下での温度依存性を詳細に調べるため、0.5K-10Kの磁場下での温度較正を進め、酸化ルテニウムチップセンサーの磁場下での挙動を確認した。
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Research Products
(7 results)