2008 Fiscal Year Annual Research Report
分子性三角格子Mott絶縁体のスピン液体状態の熱的検証
Project/Area Number |
18340103
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中澤 康浩 Osaka University, 大学院・理学研究科, 教授 (60222163)
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Keywords | 熱容量 / スピン液体 / フラストレーション / 強相関 / 分子性固体 |
Research Abstract |
本研究は、極低温まで長距離秩序を形成せず、スピン液体的な基底状態を形成するK型の電荷移動塩の性質を熱力学的な立場から検証し、スピン液体の熱的特徴を明らかにすることを目的としている。前年度までの研究で、K-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3が絶縁体でありながら熱容量に温度に比例する項(γT)をもち、そのγの値は約15mJK^<-2>mol^<-1>であることを指摘した。本年度は、この極低温での熱容量の磁場による変化を検出する目的で10Tを超える強磁場と超低温下での測定を行うとともに、他の三角格子構造をもつ分子性電荷移動塩であるEtMe_3Sb[Pd(dmit)_2]2での強磁場、低温実験を行い液体状態の特徴を調べる実験を行った。超低温領域での実験に用いた希釈冷凍装置を強磁場磁石にセットし最大17Tまでの磁場中熱容量の測定を行った。磁場中での温度計には酸化ルテニウムのチップ温度計を用い、東北大学金属材料研究所の強磁場超伝導材料研究センターで磁場中較正を行った。磁場の印加に伴い、BEDT-TTF分子の両端に存在するエチレン基の水素原子のもつ核スピンによるショットキー熱容量が現れ、10Tを超える領域ではその寄与が1K付近まで影響を与えることが明らかになった。これは、我々が以前に熱容量測定を行った同様のK型構造をもつ(BEDT-TTF)_4Hg_<2.89>Br_8,(BEDT-TTF)_4Hg_<2.78>CI_8でみられたのと同じ傾向である。水素原子の核熱容量はT^-2の温度依存性を与えるとして差し引きを行うと、温度に比例する熱容量は磁場中でも有意に存在し、その大きさは零磁場での値に近いことが明らかになった。またEtMe_3Sb[Pd(dmit)_2]_2では、K-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3と同様に低温領域で温度に比例する項が存在するが、磁場による水素核の寄与はBEDT-TTF塩と比較して大きくなることが判明した。
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Research Products
(13 results)