2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18340113
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
内山 智香子 山梨大学, 大学院医学工学総合研究部, 助教授 (30221807)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平岡 賢三 山梨大学, クリーンエネルギー研究センター, 教授 (80107218)
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Keywords | スピンエレクトロニクス / マイクロ・ナノデバイス / 量子コンピュータ |
Research Abstract |
スピントロニクスデバイスや量子コンピュータの実現を目指した実験的研究が近年急速に進んでいる。前者は電子スピンに依存する電気伝導現象を用いたナノデバイスであり、すでに大容量記憶媒体が作成され、現在はスピントランジスタなどの素子開発が行われている。また後者では量子ドットなどの半導体のナノ構造中に、情報をエンコードした電子スピンを注入し、その量子状態を操作することによる情報処理の可能性に注目が集まっている。これらのスキームで正確な情報伝達・処理を実現するために、半導体構造中で電子スピンの情報をいかに保持するか、ということが中心的な課題となっている。本研究では、半導体構造中での電子スピンの緩和現象の解明を通して、ナノシステムの安定性を論じるとともに、新たな量子統計力学的手法の開発を目指している。 今年度は、半導体構造中での電子スピンの緩和現象に取り組んだ。その際に、スピンで構成された熱浴と相互作用する電子スピンの時間発展を求めるための方法論を構築した。この方法論は、従来の射影演算子法を基礎においているが、最終表式はマスター方程式のような微分方程式ではなく、任意の時間差の間の変化を行列形式で求めることができるものである。これにより、Dynamical mapとマスター方程式の対応を明確にすることができた。得られた一般式を上述のモデルに適用したところ、熱浴を構成するスピンと注目しているスピンが非共鳴の場合に、Dynamical mapの完全正値性(Complete positivity)が破られる時間領域があることを示した。この場合、一度熱浴に吸収された、注目しているスピンのエネルギーが再吸収されるという、非マルコフ効果を色濃く反映している。現在の量子情報処理のスキームは、完全正値性を下敷きにしているものがほとんどであるため、今後、量子情報処理との関係を具体的につけていく予定である。
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