2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18340113
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
内山 智香子 University of Yamanashi, 大学院・医学工学総合研究部, 准教授 (30221807)
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Keywords | スピンエレクトロニクス / マイクロ・ナノデバイス / 量子コンピュータ |
Research Abstract |
スピントロニクスデバイスや量子コンピュータの実現を目指した実験的研究が近年急速に進んでいる。前者は電子スピンに依存する電気伝導現象を用いたナノデバイスであり、すでに大容量記憶媒体が作成され、現在はスピントランジスタなどの素子開発が行われている。また後者では量子ドットなどの半導体のナノ構造中に、情報をエンコードした電子スピンを注入し、その量子状態を操作することによる情報処理の可能性に注目が集まっている。これらのスキームで正確な情報伝達・処理を実現するために、半導体構造中で電子スピンの情報をいかに保持するか、ということが中心的な課題となっている。本研究では、半導体構造中での電子スピンの緩和現象の解明を通して、ナノシステムの安定性を論じるとともに、新たな量子統計力学的手法の開発を目指している。 今年度は、特に電子スピンの緩和現象を解明する上で重要な役割を果たす複素アドミッタンスに焦点を絞った研究を行った。複素アドミッタンをもとめる際には、従来、注目している系が熱浴と分離(decouple)した初期条件が多く多く用いられてきた。(ここで初期条件とは、たとえばパルス的な外場を印加する直前の状況を指す。)しかし、このような条件はμSR等の実験以外の状況にはそぐわない人工的なものであり、実際には注目している系は熱浴までを含んだ全系で熱平衡状態にあると考えるほうが自然である。本研究ではこのような初期条件にも対応できるように、線形応答理論の拡張を行った。この定式化は、同時に注目している系と強くの相互作用の非マルコフ効果と、熱浴との相互作用による周波数変調の効果も考慮できるものとなっている。得られた表式を互いに相互作用する複数スピン系の緩和現象に適用を行った。研究成果については、日本物理学会秋の分科会、国際会議Dynamics and manipulation of quantum systems、及び日本物理学会春の年会にて発表し、論文にまとめたものを現在投稿中である。
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Research Products
(1 results)