Research Abstract |
本研究は,(1)事例研究,(2)理論解析,(3)数値実験の3つの課題を遂行し,新野が全体の総括を行う形で研究を進めている。本年度の研究実績の概要は下記の通りである。 (1)事例研究(担当:新野) 2005年の梅雨前線上のメソα低気圧数例について,ルーティン観測と客観解析のデータを用いて,低気圧の構造他の環境場の特徴を解析した。また,気象庁の領域モデルや非静力学モデルを用いた数値シミュレーションにより,低気圧の再現を行い,詳しい解析を行った。更に,凝結熱や海面からの潜熱,顕熱フラックスの効果を調べる感度実験を行い,低気圧の発生,発達の機構や構造の変化を把握した。 (2)凝結熱を伴う非地衡流傾圧不安定の理論解析(担当:伊賀) 引き続き,鉛直方向のシアに加えて南北方向にジェット状をした基本流で凝結加熱を考慮した場合の非地衡風の傾圧不安定の特性を線形理論により調べた。この際,基本場としては梅雨期のメソαスケール低気圧が卓越する時期の環境の気候場を,梅雨前線南端の位置を揃えた平均により求め,その構造,力学,エネルギー収支などを詳細に調べると共に,観測で得られた擾乱の東西一鉛直構造の南北方向の変化と比較検討した。また,事例研究,数値実験の結果と比較して,相互の妥当性を検討した。気候場を求めるに当っては,その平均操作により,ジェットの幅が広め,傾圧性が弱めに出る可能性もあるので,これらのパラメータや凝結加熱の強さなどが変化した場合の増幅率最大の擾乱の特性についても調べた。 (3)ハイブリッド低気圧の数値実験(担当:柳瀬,新野) 平成19年度に行った様々な凝結加熱,傾圧性のもとでの予備的な水平解像度5kmの数値実験の結果を検討した。続いて,より幅広いパラメータ範囲と多様なパラメータ値に対して,本格的な数値実験を行い,これらの数値実験で得られた結果のエネルギー収支や熱収支,渦度収支などの詳細な解析を行った。
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