Research Abstract |
今年度は,(1)万田野層,(2)市宿層と柿ノ木台層,(3)上部白亜系Tocito層,ならびに(4)上部中新統番ヶ森山層、青麻層の地質調査と採取試料の分析を行った。 万田野層では,ユニット境界に発達する泥岩層の分布形態とファブリックを地中レーダー探査と試料の電顕分析で詳しく検討した,その結果,fluidmudに特徴的と考えられる粒状構造が広く認められた。この結果,ストームによるサンドリッジの断続的な移動停止は,fluidmudの堆積を特徴的にともなうと解釈される。 柿ノ木台層に挟在する砂岩層は,市宿層のサンドリッジ堆積物起源と解釈されるタービダイトで特徴づけられる。タービダイトの堆積は,特に,サンドリッジの移動が停止する時期に活発に行われていることが明らかとなった。さらに,外側陸棚では,スランプスカーの発達による海底勾配の変化に対応した混濁流の一時的な流速増加により,砂岩層が沖合方向へ一旦薄くなり,その後再び厚くなることが明らかとなった。 Tocito層は,サンドリッジモデルが発祥した地層の一つである。しかし,今年度の詳細な野外調査の結果,サンドリッジの特徴が必ずしも広く認められず,むしろ,潮汐の影響を受けた複合デューンの集合体であるが明かとなり,Tocito層の形成が海進期ではない可能性が高くなった。このことは,これまで無批判に受け入れられてきたサンドリッジモデルそのものの有効性を再検討する必要のあることが改めて明らかとなった。 番ヶ森山層、青麻層は,市宿層と大変類似する地層であるが,構成単位であるデューン堆積物が規模の小さなデューン堆積物の集合体であることが大きな相違点である。このような違いがどのようなプロセスの違いによってもたらされるのかは,現時点では明らかではない。しかし,サンドリッジ堆積物の多様性を検討する上で,次年度詳しい比較検討を行う予定である。
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