Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川幡 穗高 東京大学, 海洋研究所, 教授 (20356851)
松田 博貴 熊本大学, 理学部, 教授 (80274687)
横山 祐典 東京大学, 海洋研究所, 准教授 (10359648)
杉原 薫 福岡大学, 理学部, 助教 (90320275)
藤田 和彦 琉球大学, 理学部, 助教 (00343377)
|
Research Abstract |
後氷期堆積物 タヒチ島北部のTiarei沖および南部のMaraa沖の掘削試料中の造礁サンゴ群集ならびに無節サンゴモ群落を検討した結果,以下が明らかになった. 1) サンゴ礁の成立時期は地点間で異なっており,また最も早く移入した群集の組成は底質によって異なる. 2. 後氷期にサンゴ礁が形成され始めた頃は,造礁生物の中でも環境に敏感なタクサにとって好適な環境ではなかったが,13〜12kaには改善された.これは,島が乾燥化し,陸域からの河川水の流入量が減少したことによると推定される. 3. 浅海域〜中深度に特徴的な造礁生物群集が長期間存続したことが明らかになった.これは,後氷期のほとんどの期間に渡って島には堡礁が発達していたことを示す.16〜12kaの造礁生物群集の変化は,海水準の上昇だけではなく,それに起因する環境変化(例えば,海水の濁度や組成の変化)が原因と推定される. 更新世堆積物 タヒチ島南部のMaraa沖のHole 310-M0005D(水深約60m)から得られた全長約70mの更新世サンゴ礁堆積物(コア深度33.22〜101.93m)の堆積相,造礁サンゴ群集,大型有孔虫群集,無節サンゴモ群落を検討した結果,2回の大規模な海進が認められた.このうち,2回目の海進の規模は約90mに達する.タヒチ島の沈降速度が一定とし,堆積物の堆積水深と現在の位置を比較すると,本海進はTermination IIに対比される.また,堆積相および化石相の検討結果は,本海進中に一時的な海退があったことを示しており,これはTermination IIの間に起こったと想定されている海水準の低下("sea-level reversal"; Siddall et al., 2006)に対応すると判断される.なお,従来の研究では,"sea-level reversal"を示す直接の証拠は見出されていないため,本研究の結果は極めて重要である.
|