Research Abstract |
まず,本年度当初に,本研究の主たる目的の一つであるバイオマーカー分析に不可欠な,ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS;株式会社島津製作所・GC-2010及びGCMS-QP2010)などを購入した. また,6月からは,長谷川と学生2名が,北海道北西部達布地域の金尻沢に分布する白亜系蝦夷層群のOAE2に相当する層準(セノマニアン/チューロニアン境界)において,2.4m間隔で約100gづつ,総計120試料の堆積物サンプルを採取した.これらのサンプルを用いて,陸源有機物炭素(Ctorg)の炭素同位体比分析,およびサンプル中に含まれる有機化合物の分析(バイオマーカー分析)を行った.Ctorgの分析は9月および10月に高知大学海洋コア総合研究センター現有の元素分析計直結型質量分析装置を用いて行い,バイオマーカー分析には本年度当初に購入したGC/MSを用いた. Ctorgの炭素同位体比分析の結果,非常に高時間解像度の炭素同位体比曲線が得られ,欧米の代表的なOAE2のセクションである,PuebloおよびEnglish Chalkセクションとの詳細な対比が可能となった.これにより,これまでは〜50万年の精度であった欧米と本邦との間のOAE2の年代対比が,〜1万年の精度で可能であることが明らかになった.また,バイオマーカー分析の結果,このOAE2に相当する層準において,長鎖n-アルカンの組成比や,カダレン/レティンの比などが大きく変動することが明らかになり,これらの指標がOAE2における陸上環境変動を記録している可能性が示唆された. さらに,10月からは,計画申請時より予定していたポスドク研究員を1名を採用し,長谷川と共に,これらの結果の議論と編纂を行っており,初年度に予定していた計画の主要な過程を完了するに至った.
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