Research Abstract |
*E極限環境原核生物の熱耐性と生存限界を調べるため,長野県北安曇郡小谷村にあるNEDO地熱井N18-OT-2において平成19年度に採水を実施する計画をたてたが,脇に隣接して行われているOT-3井掘削作業の関係で平成19年度に繰り越し申請した。掘削作業は2月上旬に終了したため,申請通り4月10日-14日に,高温ボアホール型採水器を用いた地熱貯留層(深度700m以深,温度>120℃)からの原位置地熱水採水を2回実施し,保圧のまま採取された地熱水に対し,有機,無機地球化学,ガス分析,同位体分析,微生物の分子生物学的検討,CARD-FISH,分離培養などを用いた研究を行った。 その結果,非常におもしろいことが2点判明した。まず,N18-OT-2井の熱水は2つ(以上?)の異なった起源を持つ地熱水が混合してできたものであるという事である,この地熱井では事前に行なわれた生産性試験によって,熱水フィードゾーンが深度700m付近と深度1040m以深の複数箇所にあることが推定されていた。さらに掘削時のコアカッティングスの解析から,これらの熱水フィードゾーンを胚胎する地層が異なっていて,深度700mの浅部地熱流体は頁岩,砂岩などからなる来馬層群に由来し,1000m以深の深部地熱流体は蛇紋岩層から供給されていることが示唆されていた。熱水の化学成分(Na-HCO3泉),極めて高いCO2濃度(74mM/kg),酸素水素同位体組成,などをもとに計算すると,浅部熱水は周囲の温泉と同じ組成を持ち,深部熱水はCO2に富み蛇紋岩層との熱水反応を経た地熱流体であることが明らかになった(三好ほか,2008地球惑星合同大会にて発表予定)。地熱貯留槽深度からの現位置採水が,このような問題の解決に有効であることは指摘されていたものの,このような明快な混合が証明されたことはきわめてまれなことと言える。 次いで,浅部熱水を代表する同一敷地内の温泉井戸より採取された熱水中に,これまで分類群があることが推定されつつも実際に確認されたことのなかったバクテリアが発見されたことである。これは70℃の嫌気条件下で増殖し,イオウ化合物を代謝するもので,門のレベルで新規の微生物である(Mori et al.,2008投稿中)。
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