Research Abstract |
1.Enami et al. (2007)によって提唱されたラマン残留圧力計を,三波川変成帯高温部に適用し,エクロジャイト相変成作用の痕跡を検出する試みを前年度に引き続き行った.その結果,(1)従来はエクロジャイト相変成作用の痕跡が報告されていなかった変泥質岩も,エクロジャイト相の圧力に対応する残留圧力を保持している場合があり,(2)エクロジャイト相変成作用を被った地域(エクロジャイト・ユニット)は,従来想定されていたよりも,特に南方側へ広がることや,(3)地域によっては,エクロジャイト・ユニットとその周囲の非エクロジャイト・ユニットの境界が,ほぼ特定できる点などが明らかとなった.そして,これらの成果の一部を,Geoloy誌上で公表した.また,ラマン残留圧力計から,エクロジャイト相変成作用を被った可能性が高い地域め一部から,オンファス輝石やアラゴナイトがざくろ石の包有物として産することを,顕微レーザーラマン分光装置で確認した.この発見により,残留圧力の測定結果とは独立した手法・データによって,これまで非エクロジャイト・ユニットとして扱われていた地域の少なくとも一部が,エクロジャイト・ユニットに属することが確認できた.これらの成果に関する論文2編を投稿中である. 2.五良津エクロジャイトに対して,Lu-Hf年代測定を行い,89-88 Maの年代値を得た.これは,これまでに報告されているphengite Ar-Ar年代(88-90Ma)等と極めて近い値であり,(1)三波川変成作用に大きな影響を与えたとする海嶺沈み込みモデルから期待できる変成年代と調和的で有り,(2)変成帯の上昇速度が2.5 cm/year以上と極めて大きかったことを示す.これらの成果に関する論文2編が印刷済みおよび印刷中である.
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