2006 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯林発生源調査と安定同位体比測定による大気中塩化メチルの収支バランスの解明
Project/Area Number |
18340179
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
横内 陽子 独立行政法人国立環境研究所, 化学環境研究領域, 室長 (20125230)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角皆 潤 北海道大学, 理学(系)研究科, 助教授 (50313367)
斉藤 拓也 独立行政法人国立環境研究所, 化学環境研究領域, NIESポスドクフェロー (40414370)
奥田 敏統 広島大学, 大学院総合科学研究科, 教授 (20214059)
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Keywords | 塩化メチル / 熱帯植物 / 収支 / 放出量 / 安定同位体比 |
Research Abstract |
(1)マレーシア熱帯林の主要な樹種であるフタバガキ科樹木13種について、バイアル瓶法による塩化メチル(CH_3Cl)放出速度の測定を行った結果、そのうちの6種が数ng/drywt/h以上のCH_3Clを放出するCH_3Cl放出植物と同定された。特にShorea ochrophloriaからは、200ng/drywt/hを上回る大量のCH_3Clが放出されていることが明らかとなった。また、次年度に現地の研究室に設置するガスクロマトグラフ/水素炎イオン化検出器について分析条件の検討を行い、濃縮過程を経ずに迅速に分析を行うための手法を開発した。 (2)CH_3Clを大量に放出することが確認されているフタバガキ科樹木(Hopea odorata)を入手し、環境条件を制御できる大型チェンバー内でCH_3Cl放出速度に対する気温と日射の影響を調べた。その結果、フタバガキ科樹木からのCH_3Cl放出速度は日射の強まる日中に2割程度減少することが見出された。また、CH_3Clの放出速度はチェンバー内の気温の上昇に対して正の応答を示すことが明らかとなった。 (3)同位体マスバランス法を用いて熱帯植物由来のCH_3Cl寄与率を検証するための準備研究を行った。まず観測船上において2L程度の多量の海水試料から真空抽出法とヘリウムパージ法を組み合わせてCH_3Clを含む同位体定量用の溶存気体成分を空気と遮断しながら抽出・濃縮する装置(PETITE)を開発した。抽出効率や同位体分別に関して基礎実験を行うとともに、本装置を用いて西部北太平洋亜寒帯海域の定点で海水中のCH_3Clや付随する非メタン炭化水素類の炭素同位体組成を定量した。観測海域ではCH_3Clは未飽和であり、その炭素同位体比は大気より炭素同位体比のデルタ値が大きいことが明らかになった。また未飽和度が上がるほど炭素同位体比のデルタ値が上昇することもわかった。これは本観測海域は大気CH_3Clのシンクとなっており、未飽和度と炭素同位体比のデルタ値との間の相関は、分解時の同位体分別を反映しているものと結論した。またバイオマス燃焼由来のCH_3Clの炭素同位体比を決定するため、室内燃焼実験装置を構築し、各種燃焼に伴って発生するCH_3Clの炭素同位体比を定量した。
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