2006 Fiscal Year Annual Research Report
水槽飼育サンゴを用いた骨格環境指標の高精度化に関する研究
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18340180
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
鈴木 淳 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 主任研究員 (60344199)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川幡 穂高 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (20356851)
酒井 一彦 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 助教授 (50153838)
村上 明男 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 助教授 (50304134)
岡井 貴司 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 主任研究員 (20356679)
村山 昌平 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境管理技術研究部門, 主任研究員 (30222433)
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Keywords | サンゴ / 炭酸カルシウム / 酸素同位体比 / 水温 / 成長速度 / 炭素同位体比 / 生物鉱化作用 |
Research Abstract |
3年間の研究期間の第一年目にあたる平成18年度には、琉球大学瀬底実験所にて小型恒温水槽を用いたハマサンゴ(Porites australienis)の飼育実験を実施した。飼育実験には3つの親群体から切り分けられたクローンを用い、各条件区にて飼育した。最初に換水率および換水方法によるサンゴ成長の影響を水中重量法により評価した.1〜3日毎の定期的な換水では、ほとんど骨格成長がみられず、連続的な換水が継続的な成長にとって重要であることが判明した。そこで、連続流水系の水槽システムを組み、水温を21℃から29℃の5段階に設定して、約4ヶ月間の長期飼育実験を試みた。飼育期間中の水中重量増加量は、遺伝子型によって有意な差が認められた。検討した3つの親群体から切り分けられたクローンのうち、2つについては骨格成長量と水温とに明瞭な対応がみられなかったが、もう一つの遺伝子型については、水温に対応した顕著な成長がみられた。採取したサンゴ骨格は,産業技術総合研究所にて安定同位体比質量分析装置を用いて酸素同位体比の分析が予定されている。また、サンゴのクロロフィル濃度および共生藻密度等について定量を行う予定である。 また、理論的な検討として、造礁サンゴを中心に,いろいろな生物殻の酸素・炭素同位体比とその規定要因について文献調査を行った。サンゴ骨格の酸素同位体比の変化は,基本的には海水温と海水の酸素同位体比を反映する。しかし,サンゴには骨格の酸素同位体比と水温の関係が平衡値からずれるという「生物学的効果」が認められ,これは成長速度に起因する反応速度論的同位体効果によるものと考えられている。石西礁のハマサンゴ群体のうち,水深が小さく成長速度が大きい群体は,骨格の酸素・炭素同位体比が逆相関関係を示すが,水深が大きく成長速度が小さい群体は,反応速度論的同位体効果が卓越した場合に生じる正相関関係が見られた。サンゴ骨格にこのような成長速度に依存した同位体比の反応速度論的同位体効果が見出されたことから,サンゴ記録から正確な古気候情報を読み出す場合は,細心の注意が求められる。
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Research Products
(6 results)