2007 Fiscal Year Annual Research Report
金属錯体の柔軟な電子状態の理論研究-物性と反応性の微視的解明と制御
Project/Area Number |
18350005
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
榊 茂好 Kyoto University, 工学研究科, 教授 (20094013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 啓文 京都大学, 工学研究科, 准教授 (70290905)
中尾 嘉秀 京都大学, 工学研究科, 助教 (40362462)
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Keywords | 電子状態理論 / 遷移金属錯体 / スピンクロスオーバー / 励起状態 / 分子構造 / 反応機構 / 触媒作用 / ポテンシャル面 |
Research Abstract |
遷移金属錯体は柔軟な構造、電子状態を持っているが、その表れの一つはスピンクロスオーバー錯体である。本年度は鉄(III)スピンクロスオーバー錯体による光誘起スピントラッピング現象(LIESST)について理論的研究を行った。通常は鉄(II)錯体がLIESST現象を示すが、鉄(III)錯体での報告は初めてであり、錯体化学、分子科学、物性化学で興味を持たれている。鉄(III)錯体の基底2重項、基底4重項、基底6重項のポテンシャル面(PES)を求めたところ、従来の報告と異なり、中間スピンの4重項の平衡核配置付近で2重項、6重項のPESが交差していることが明らかとなった。また、これらのPESの制御は置換基の導入では困難であること、従って、新しい骨格の配位子の開発が必要であることが示唆された。類似の検討を鉄(II)錯体についても行い、基底1重項、基底3重項、基底5重項のPESを求め、電子状態とエネルギー変化の分子レベルでの解明を達成した。 反応過程としては、イリジウム錯体を触媒としたジシランによるベンゼンの直接的シリル化反応の反応機構を解明した。活性種はイリジウム(III)トリシリル錯体であり、最初の過程はベンゼンのC-H結合の酸化的付加、シリルとフェニルの還元脱離、イリジウム(III)ジシリルヒドリド錯体とジシランの反応による活性種の再生で進行すること、この活性種の再生過程がジシランの置換基に大きく依存し、フッ素のケイ素上への導入が不可欠であることが示された。この結果は実験結果と一致している。触媒サイクルはイリジウム(V)種を経るという興味深いものであることが示された。 これら以外にも、金属とケイ素との興味ある相互作用を明らかにした。
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Research Products
(4 results)