2006 Fiscal Year Annual Research Report
開殻分子系の非線形光学効果の機構解明と物質設計への展開
Project/Area Number |
18350007
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中野 雅由 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (80252568)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鎌田 賢司 独立行政法人産業技術総合研究所, 光技術研究部門, 主任研究員 (90356816)
久保 孝史 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (60324745)
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Keywords | 開殻系 / ジラジカル / フェナレニル / 非線形光学 / 超分極率 / Ab initio法 / 密度汎関数法 / 励起状態 |
Research Abstract |
本年度は、一重項開殻ラジカル系のモデルであるH2分子の解離について、full-CI法に基づく時間摂動論による解析を行い、遷移モーメント、励起エネルギーの変化とジラジカル因子との関係を明らかにした。その結果、基底状態のジラジカル性が増大するにつれて、第二励起状態のイオン性が増大し、そのため基底-第一励起状態間の遷移モーメントが減少し、一方、第一-第二励起状態間の遷移モーメントが増大すること、第一、第二励起エネルギーが減少することがγのジラジカル依存性の主原因であることが判明した。モデル分子のP-キノジメタンやイミダゾール、トリアゾール環をもつ荷電中性一重項ジラジカル系のγの高精度量子化学計算および密度汎関数法による計算を通して、UBHandHLYP法、スピン射影UMP2法などが実在開殻系に適用可能な信頼できる方法であることがわかった。実在/新規のモデル分子として、フェナレニルラジカルユニットを含む縮環系およびπ共役架橋を含む系などを用い、中央縮環の芳香属性、リンカーの接続部位などによりジラジカル因子の制御が可能になることを予測した。計算の結果、ジラジカル因子が小さい場合(閉殻)および大きな完全開殻系ではγの値は著しく減少し、中間ジラジカル性の場合に極大をもつことが示された。また、これらの中間ジラジカル性をもつ系のγのスピン多重度依存性を調べたところ、三重項状態は一重項状態に比べ著しくγが減少することが判明した。これは、Pauli排他律に起因する効果と考えられる。実験サイドでは、ジラジカル性が50%と見積もられる新規のフェナレニル環を含む非局在化一重項ビラジカル種の合成と単離に成功した。測定では、2個のフェニルフェナレニル基をアセチレン基でつないだ化合物BPLEと同様に2個のピレン基をアセチレン基でつないだBPYEの二光子吸収断面積スペクトルの測定を行った。BPLEとBPYEはどちらも同じ数のフェニル環を持つが、前者が開殻系であるのに対して、後者は閉殻系である。測定の結果、BPLEは820nm付近で2000GMを越える値を示したのに対し、BPYEはそれよりも短波長である600nm-750nmで700-250GMであり、開殻系でより強い二光子吸収が得られた。
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