2008 Fiscal Year Annual Research Report
開殻分子系の非線形光学効果の機構解明と物質設計への展開
Project/Area Number |
18350007
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中野 雅由 Osaka University, 大学院・基礎工学研究科, 教授 (80252568)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鎌田 賢司 独立行政法人産業技術総合研究所, 光技術研究部門, 主任研究員 (90356816)
久保 孝史 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60324745)
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Keywords | 開殻系 / ジラジカル / フェナレニル / 非線形光学 / 超分極率 / Ab initio法 / 密度汎関数法 / 励起状態 |
Research Abstract |
フェナレニルラジカル分子のクラスター(一次元slipped stack集合体)のモデルとして二量体、三量体のUBHandHLYP法を用いた有限場法を適用し、モノマーあたりの第二超分極率γの値のサイズ依存性および平均ジラジカル因子依存性を検討した。実験からフェナレニル環の面間距離が小さくなるが、これは互いに逆向きの不対電子間に共有結合的な相互作用が生じることに起因することが明らかになった。それに伴い、分子間にわたるπ電子共役の拡張傾向が見られ、電場誘起による分子間電荷移動が引き起こされると予測される。実際に、モノマーあたりのγの孤立分子の値に対する増大率は、閉殻二量体系に比べて著しく大きいことが予測された。中間ジラジカル性をもつ分子からなる集合体は、閉殻分子系からなるそれに比べて非線形光学材料設計の視点からも優位であることが示唆される。フェナレニルラジカル分子を含む開殻一重項系における荷電導入の効果に関しては、現在、そのモデル系として、2原子分子でのγに対する荷電導入効果を様々な電子状態計算法を用いて検討している段階である。一方、新しい中間開殻分子系として、近年、一重項開殻系の存在が判明したグラフェンに関して、開殻非線形光学物性の立場からの研究を開始した。四角形グラフェンにおいて、γのアームチェア端方向成分がジグザグ端方向成分より増大すること、その成分は著しいスピン状態依存性があること、を見出した。実験による検討を進めるだめ、いくつかの化合物の合成および測定を開始している。グラフェン系には開殻非線形光学分子系に属するものが多く、様々な制御可能性も示唆され、今後の集中的に検討を行なう予定である。
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