2007 Fiscal Year Annual Research Report
超原子価ラジカルの化学の新展開:気相からのアプローチ
Project/Area Number |
18350009
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
冨宅 喜代一 Kobe University, 理学研究科, 教授 (00111766)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 春樹 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (80261551)
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Keywords | 超原子価ラジカル / アンモニウムラジカル / オキソニウムラジカル / イオン化エネルギー / フェムト秒分光 / クラスター / ジペプチド / 赤外分光 |
Research Abstract |
超原子価ラジカルは、気相や溶液反応で反応中間体として重要な役割を果たしていることが、次第に認識されつつある。本研究では超原子価ラジカルの反応特性を系統的に調べ、生体反応を含む広範な化学反応に果たすラジカルの役割を解明することを目的とした。19年度はNH_4とCH_3OH_2に注目し、反応中間体としての生成過程と安定性を調べ、また関連するペプチドイオンの電子状態と光解離過程について以下の研究を遂行した 1.NH_4はアルカリ原子と等電子構造を持ち、クラスター内で自発的にイオン化することが予測される。この特性の理解を深め、溶媒和電子生成と関連して水クラスター内での金属クラスターの安定性を調べるために、[Na_2-(H_2O)_n]の光電子分光実験と理論計算を行った。この結果、水分子3個以上が付加するとNa_2-から水への電子の移動が起こるとともに、Na原子間に水分子が挿入した構造が安定になり、二量体の溶解過程が始まることを明らかにした。 2.極性溶媒中でのNH_4の安定性:H_2OやCH_3OH中でのNH_4の生成と緩和過程のダイナミックス、及びオキソニウムラジカルCH_3OH_2の安定性を調べるために、(NH_3)_n(Ch_3OH)_m@Hのイオン化エネルギーの測定とフェムト秒レーザー分光実験を行った。H_2OやCH_3OHクラスター中では、(NH_3)_n中と異なり、より強い水素結合で構造が決まるとともに、NH_4の生成が遅くなることが明らかになった。またH原子はNH_3に優先的に付加してNH_4を生成し、CH_3OH_2は生成しないという結果が得られた。 3.タンパク質イオンの質量解析では、ペプチド類のN末端の-NH_3+の電子再結合で生成するラジカルの解離反応が広く利用されている。この反応の基礎的理解を得るとともに、ペプチドの電子状態に与える影響を調べるために、ジペプチドイオンの赤外および紫外光解離分光実験を行った。この結果、構造および電子状態について新しい知見を得た。また、構造情報のより的確に得られることが予測される核磁気共鳴の導入を計るため,気体NMR法の検討を行った。
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Research Products
(10 results)