2006 Fiscal Year Annual Research Report
水素系・陽電子系量子シミュレーションのための高精度多成分系分子理論の確立
Project/Area Number |
18350014
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
立川 仁典 横浜市立大学, 国際総合科学研究科, 教授 (00267410)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前園 涼 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 講師 (40354146)
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Keywords | 多成分系分子理論 / 多成分系密度汎関数法 / 多成分系量子モンテカルロ法 / 陽電子化合物 / ポルフィリン / 同位体効果 |
Research Abstract |
我々は現在までに、分子軌道の概念をプロトンなどの軽い粒子に拡張した多成分分子軌道(MC_MO)法を開発し、様々な応用計算を実行してきた。MC_MO法では、電子のみでなく核をも量子力学的に取り扱うために、平均場近似を超えるためには電子-核相関、核-核相関といった新たな多体効果を考慮する必要がある。これらの多体効果を取り込むために、我々は現在までに配置間相互作用法や摂動法を適用してきたが、精密解への収束性や、計算コストといった課題が浮上してきた。そこで本研究課題においては、これらの多体効果を効率的に取り込むため、1、多成分系密度汎関数理論、および2、多成分系量子モンテカルロ法の開発を試みた。 1.多成分系密度汎関数法の開発: 多成分系における電子およびプロトンに対するKohn-Sham演算子を定義した。全エネルギー、および核座標による微分表式も導出し、Gaussian03プログラムパッケージに組み込んだ。本手法を用いて、ポルフィリン誘導体であるPorphine分子およびPorphycene分子を計算した。その結果、例えば重水素置換体の幾何学的同位体効果は、NMRの実験値を定性的に再現することが解った。 2.多成分系量子モンテカルロ法の開発: さらなる化学的精度で多成分系の全エネルギーを算出するために、多成分量子モンテカルロ法の開発に取り組んだ。異種粒子間の相関が最も大きくなる、電子と「陽電子」を直接含めた、[H-,e+]、[LiH,e+]系を計算対象とした。[H-,e+]系に対しては、有効桁数4桁の範囲内で、Hylleraas型関数を用いたHoらのworld recordと同じエネルギー値を与えることが解った。一方[LiH,e+]系に対しては、Explicitly Correlated Gaussian関数を用いたStrasburgerらのworld recordのエネルギー値と較べ、0.5kcal/mol程高くなってしまった。これは、拡散モンテカルロ法特有の節固定近似が影響しているものと考えている。しかしながら我々の手法は、系の全エネルギーと陽電子親和力を大きく改善させる事がわかった。
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