2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18350019
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
草間 博之 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 准教授 (30242100)
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Keywords | レニウム / 求電子的活性化 / フェノール / 連続環化 / 多環性骨格 |
Research Abstract |
近年の有機合成において、様々な遷移金属化合物が反応試剤として頻繁に利用されているが、その一方で、これまで有機合成にあまり利用されたことのない遷移金属も存在する。これらの金属は性質が未知の部分が多いだけに、従来にない特徴的反応性を示すことも期待される。本研究では、そのような金属の一つであるレニウムに着目し、レニウム化合物の特性を活かした新規、かっ高効率的な合成反応の開発を目的とし、低原子価レニウムカルボニル錯体によるアルキンの求電子的活性化を基盤とした新規な多環性骨格構築反応について検討を行った。 その結果、シロキシジエン部位を有するアルキンに対して触媒量のレニウムカルボニル錯体を作用させるとアルキンのジェミナルアルキル化という新形式の反応が進行し、これが含窒素双環性化合物の合成にも問題なく適用可能であること、さらには基質中の窒素原子上の保護基、レニウム錯体の種類を適宜選択することにより、異なる骨格を持つ含窒素化合物の選択的な作り分けも実現できることを明らかとした。さらに、ω-アルキニルアミンに対してレニウム触媒を作用させると、新規な反応活性種である金属含有アンモニウムイリドが生成し、これが1,2-Stevens転位型の反応を速やかに起こすことで多環性インドール誘導体が一挙に合成できることも見いだした。 加えて、シリルエノールエーテル部位を持つプロパルギルエステル誘導体にレニウムカルボニル化合物を作用させると、シリルエノールエーテルからの分子内環化、エステル部位の脱離を経て多置換フェノールが位置選択的に、かつ高収率で得られることも見いだした。 これらは、すべてレニウム化合物に特徴的な反応であり、レニウム化合物によるアルキンの求電子的活性化という手法が、多様な環状骨格形成に有効であることを示した点で学術的な価値があると考えられる。
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